白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
 どうやらプロ騎手になっても独身でいるうちは所属している厩舎の寮で堅苦しい生活をしつづけないといけないらしい。
 あたしも女子大の寮で暮らしているから彼が言いたいことも理解できるが、だからといってすぐに結婚できるわけでもない。あたしとハルマのつきあいを知っている両親も、結婚については「フーカちゃんが卒業してからでも充分でしょう」と言っている。あたしも国家資格である管理栄養士の資格を取って無事に大学を卒業して就職するまでは無理だよとハルマに言い聞かせてる。
 彼は「それもそうだね」といちおうは納得してくれたけど、あと四年間待たないといけないと言われて残念そうにしている。ため息をつくあたしに見かねた大学の友人から「いっそのこと入籍だけでもしちゃえば」なんて意見も飛び出したほど。
 この頃にはハルマも期待の新人騎手として頭角を現していた。地方局の競馬番組で取り上げられるようになっていたから、早く結婚しないとほかの女が寄って来るかも、なんて周囲が心配する声も聞こえた。けれどあたしは首を振らなかった。


 ――今度はあたしが夢を叶える番。だから待ってて、ハルマ。
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