白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
6 + Side of Haruma +



 十九歳の春、新馬戦の最中に落馬事故を起こした俺は、約一年間リハビリに励んだ。
 所属する厩舎には迷惑かけたが、まだ若いんだから回復も早いよと労われ、二十歳の誕生日を迎えた頃には復活第一戦で無事に勝利をおさめることができた。
 プロ騎手に登用され、がむしゃらになってレースに挑んでいた一年目と違い、怪我に泣かされた二年目は俺にとって将来を考えさせられる期間になった。落馬事故を知って駆けつけてきたフーカが泣いている姿を見たからかもしれない。俺のために泣いてくれているフーカは美しい女性へと成長していた。高校三年間誰とも異性と付き合わなかったときっぱり言い放った彼女が頼もしかった。ようやく再会して逢えるようになったのに今度はフーカが四年間待ってと言い出したときには胸が苦しくなったけれど。もし、この状態で結婚していたら俺は後悔していたかもしれない。大怪我を負って彼女を縛りつける可能性を、彼女の涙を見るまで思い浮かばなかったのだから。

「俺が車椅子生活を余儀なくされたら……フーカとの結婚は難しいよな」
「ばかっ」
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