紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「……ありがとうございます。じゃあ今度何かお礼を……」

「灯ちゃんは本当に律儀だね。僕とデートしてくれるだけで十分なのに」


そう申し出れば、くすっと柔らかく笑った和泉さんが、次の瞬間色香の伴った双眸で私の瞳を捕らえた。


「……でも、そういうことならそのお礼、今いただこうかな」

「……え?」


妖艶に持ち上がった口角からそう紡がれた時。


私を支えてくれていた腕が離れ、今度はその手がそっと私の後頭部に添えられる。

そしてそれと同時に唇に降ってきた柔らかい感触と温かい熱。


酔って寝ぼけた頭では、何が起こったのか咄嗟に理解出来なかった。

でもその熱がすっと離れた時、和泉さんの口元から覗いた真っ赤な舌がたった今私の唇を攫って行ったらしいそれをぺろりと舐めたことで。

じわじわと今起こったことが浸透し始める。


「ーー……ごちそうさま。さ、灯ちゃん、そろそろ中に入ろうか。鍵は出せる?」


コクコクと、まるで壊れた人形のように首を縦に振りながら、何とかバッグの内ポケットに入れていた母の京都土産である家内安全のお守りがついた鍵を取り出す。


でも手が震えてそれを上手く鍵穴にさすことが出来ないでいれば、私の手に和泉さんの手が添えられてカチャリと鍵の開く音がした。
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