紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「ーーどうやったら、自分でもこんな風にメイク出来るようになりますか?」
意を決して鏡越しに高木さんを見つめて問えば、隣の珠理ちゃんがハッと息を飲んだ気配がした。
「コツさえ掴めれば、ご自身でも簡単に出来るようになりますよ」
「コツ……。それは掴める気がしません……」
高木さんの聖女のような微笑みと共に放たれた返答に、私はがっくりと項垂れるしかない。道のりは遠そうだ。
「灯さんっ!じゃあコツ掴めるように、私と一緒に練習しましょう!」
すると、珠理ちゃんが突然ガシッと私の手を掴んだ。持っていた鏡を、危うく取り落としそうになる。
「えっ⁉︎」
「私が!マンツーマンでレクチャーします!任せてください!」
「ふふ、それは百人力ですね。……でも中村さんはちょっとスパルタ先生っぽくなりそうな気が……」
「確かに……」
「あ、そんなことないですよー⁉︎」
ぽそりと呟いて悪戯っぽく笑った高木さんに思わず同調してしまえば、珠理ちゃんがすかさず突っ込む。
「だって、メイクは楽しんだもの勝ちですから!」
「楽しんだもの勝ち……?」
満面の笑みを浮かべる珠理ちゃんに小首を傾げれば、
「そうそう、その通りです。深町さん、最初から上手く出来なくてもいいんです。まずはご自分を綺麗にしてあげることをぜひ、楽しんで下さいね」
高木さんもうんうんと頷く。