紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
メイクを楽しむ、か……。
そんなこと、今まで考えたこともなかったな。メイクはあくまで社会人としての身だしなみ。それくらいにしか思ってなかったからいつも最小限だったし、ましてや綺麗になりたいなんて、思ったこともなかった。
でも今は。和泉さんへの気持ちを自覚した今は、自分に自信をつけるための第一歩として頑張ってみたいと、自然とそう思っている自分がいた。
「……珠理ちゃん。よろしくお願いします」
「……!はいっ!ガッテン承知の助ですっ!」
私がペコリと頭を下げれば、珠理ちゃんはちょっと驚いた後嬉しそうに相好を崩した。
「……中村さん⁉︎なかなか古風な言葉を使いますね……⁉︎」
その様子を見ていた高木さんが、目をまあるくして随分とオブラートに包んだ言い回しをするものだから、私と珠理ちゃんは顔を見合わせて吹き出してしまった。
そうして珠理ちゃんと高木さんに背中を押された私は、今日お薦めしてもらった化粧品を全て購入し、
「さ!灯さん、次行きますよ!次!」
と勢いの止まらない珠理ちゃんに引っ張られるようにして、コスメフロアを後にしたのだった。