紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
だからこそそう遠慮する私に彼は、


「おばちゃんが、今日の海老は良いのが入ったって言ってたでしょ?ということはこの海老を使った海老天は正真正銘今日しか食べられないものだよ。だからほら、ね?」


そう言ってふわりと微笑む。

……何て言い分だ。

でもこの人の笑顔は、何ていうか本当に邪気がない。初対面なのに私が何の気負いもなく話せるのも彼の持つ雰囲気による所が大きい。

ここで相席した人とこんなに喋ったのも初めて。

"姉ちゃん、いい食いっぷりだなぁ!"などと、ガテン系のおじちゃんに声を掛けられることはたまにあるけれど。

そこまで言ってくれてるのに断るのは逆に失礼な気がして、私は「ありがとうございます……」と、彼のその好意を素直に受け取ることにした。

いただきます、とひと口齧れば、確かにいつも美味しい海老天が今日はさらにプリッと肉厚でいつも以上に美味しく感じた。

そう伝えると目の前のイケオジは嬉しそうに目を細め、「ね?」と得意げに笑うから、あれ、回し者は私のはずだったんだけど、と思わず吹き出してしまう。

それを見たイケオジも、眉尻を下げて優しく微笑む。


そして私よりも後に食べ始めたのに私よりも先に完食したイケオジは、「ごちそうさまでした」と手を合わせてから高級そうな腕時計にチラリと目をやった。

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