紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
多分私にとって珠理ちゃんは、もはや後輩というより友人と言っても差し支えないポジションにいる。


その珠理ちゃんが、まさかそんな風に考えてくれていたなんて。

AKPには、そんな意図があったなんて。

鼻の奥が、ツン、と痛んだ。

最近の彼女は、ちょっと私の涙腺を刺激し過ぎると思う。


「ーー珠理ちゃん、ちょっと今、抱き締めてもいいですか」

「……えっ⁉︎今ですか⁉︎」


込み上げそうになるものを押しとどめてそう言えば、昨日珠理ちゃんだって居酒屋で同じことを言っていたくせに、ぎょっと驚く様子がまた可愛らしい。


「うん、今。今無性に珠理ちゃんにありがとうのハグがしたい」

「……もうっ、しょうがないですねぇ。私は灯さんと違ってツンデレじゃないので、ちょっとだけならいいですよ」


まあるく見開かれていた瞳がゆっくりと弧を描き、まるで子供のわがままを受け入れる母親のような優しい表情をした珠理ちゃんが、控えめに両手を広げる。


「この流れ、もう十分ツンデレだと思うよ?」


苦笑しながら、でも私より小柄な珠理ちゃんを一瞬だけハグして「ーーありがとう」と呟けば、そっと抱き締め返してくれる。

場所が場所なだけに、行き交う人からの視線をチラチラと感じなくもないけれど、今はそんなこと、気にならなかった。
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