紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
朋くんも、僕と一緒でどちらかと言えば恋愛にはあまり興味がない淡白なタイプだったのに、あの時の彼の情熱と執着はすごかったなぁ……。
もちろんあれから20年ちょっと経った今も、彼の早苗さんに対する愛は止まるところを知らないのだけれど。
「……でも僕が彼女に会いたいのは、朋くんが思ってるような理由じゃないと思うよ?」
「じゃあどういう?」
「うーん……」
そう言われると、この気持ちを言葉にするのは少し難しい。
「私を押し退けてまで会いに行こうとするその気持ちは、一種の執着じゃないですか?つまり、そういう気持ちから来るものなんじゃないかと私は思うのですが」
「………」
ーーそういうこと、なんだろうか。
僕が彼女に、あかりちゃんに、もう一度会いたいと思うのは。
これまで自分から人を好きになった経験のない僕には、いまいち判断がつかなかった。
「まぁどちらにしろ、ちゃんと仕事を片付けて頂いてからじゃないと認められません。なので今日は諦めてください。というか、しばらくは無理です」
「……ちぇっ」
それからまたあそこであかりちゃんに会うために、僕は放浪癖を封印して毎日真面目に仕事をこなしていき。
ようやくふじさわ食堂に顔を出せたのは、あれから2週間ほどが経った頃だった。