紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】


『最近ようやく仕事が落ち着いてきて、毎週水曜日ならここへランチに来られそうなんだ。だからあかりちゃんさえ良ければ、またこうやって僕のランチに付き合ってもらえないかな?』


そんな僕の下心ある突然の誘いに、彼女は目を丸くしながらも最終的には僕に(ほだ)され了承してくれた。  


そして改めてお互いに自己紹介をしたのだが。


"灯"ちゃん。


穏やかに照らす、優しくて柔らかい明かりを連想させる漢字。

それを聞いて、ああ、とても彼女らしい名前だなぁ、と思った。


灯ちゃんといると、ドキドキもするけれどどこかほっと安心できるところもあって。

彼女の存在は、初めて会った時からいつも僕の心をぽかぽかと温かく照らしてくれる。


その心地良さは食事の回数を重ねれば重ねるほどに増していって。



ーーああ、好きだなぁと。



彼女の無防備な笑顔を見ながら、ある時それは本当に突然、ストン、と僕の胸の中に落ちてきた。
 
初めての、感覚だった。


ところが不思議なことに、それは一度気づいてしまえばどんどん膨らんでいくばかりで。

 
でも灯ちゃんは、きっと僕のことをそういう風には見ていない。

だから少しずつ関係を深めて、焦らずゆっくりと攻めていくつもり、だったのに。


ーー出会った頃にはまだ蕾だった桜もすっかり葉桜になった頃。


彼女の口から初めて聞くイケメンの営業マンだという佐原くんの名前が出てきたところで、ついに気持ちを抑えられなくなった。


悠長に構えている間に他の男に横から攫われてしまったら?

そう思ったらもう自制が効かなくて。


……なるほど、これが朋くんの言っていた執着とか独占欲というものなのかと頭の片隅で思いながら、僕はその日、葉桜の下で灯ちゃんに告白をした。

< 214 / 279 >

この作品をシェア

pagetop