紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
比呂くんの店の前で抱きしめられていた灯ちゃん。
その彼の背中に回された、灯ちゃんの手。
見た瞬間に、息が止まった。
ーー予感が、なかった訳じゃない。
出張帰りに会った灯ちゃんが、今まで以上に可愛らしくなっていたこと。
その別れ際、僕に何かを言いたそうにしていたこと。
それだけなら、まだ自惚れていられたかもしれない。灯ちゃんの気持ちが、少しは僕に傾いて来ているのかもしれないと。
でも、出張後の諸々の残務に加え溜まっていた日常業務にも追われ、ようやく時間が取れるようになった数日後。
灯ちゃんを食事に誘うも先約があると断られ、その代わり、週末に話したいことがあると言われた時。
今までのそれら全てが示すものが最終的にどこに行き着こうとしているのか、僕だって分からなかった訳じゃない。
……ただ、認めたくなかっただけだ。
僕が出張に行っていたこの1週間足らずで、灯ちゃんの気持ちに大きな変化があったのだということを。
そして、さっき比呂くんから送られて来たメッセージ。
"マッチがうちの店で初恋の男と2人で飲んでます。一応飲み過ぎないように見てますけど、迎えに来ますか?恭加さん"
……《《初恋の男》》。
それを見て、いてもたってもいられずつい向かってしまった比呂くんの店。
……抱きしめ合う2人。
これはもう、どうしたって認めざるを得ない。
ーー灯ちゃんの手を、いよいよ放さなければならない時が来てしまったのだと。