紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
和泉さんが待ち合わせ時間よりも早く来て待ってくれているような気がして、足早にエントランスを目指す。
だけど、廊下で人とすれ違う度に何となく視線を感じて落ち着かない。
やっぱりどこかおかしい……⁉︎
「深町さんお疲れ様です」
「……あ、佐原くん。お疲れ様」
ようやくエントランスに辿り着くと、ガラス張りのロビーに設置されているソファーに座ってスマホを弄っていたらしい佐原くんに声を掛けられた。
「……これからデートですか?」
「うっ……、な、なんでっ……」
近くに寄って行けば、佐原くんにずばり言い当てられて動揺してしまう。
「そりゃあ、さっきまでと全然雰囲気違いますし。それでデートじゃなかったら逆にびっくりですけど」
「(……た、確かに……)」
「それ、中村の仕業ですか?」
「う、うん、やっぱり似合ってない、かな……?」
見上げるようにじっ、と見つめられて急に居心地が悪くなる。
珠理ちゃんは可愛いと言ってくれたけれど、ここへ来るまでに感じていた視線にソワソワしていた私は不安になってつい聞いてしまった。
「似合ってますよ」
するときゅ、と口角を上げた佐原くんに思い掛けず即答され、驚きと共に反射的に顔が赤くなる。