紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「……びっ、くりした……!」

「聞いたの深町さんなのに。何驚いてるんですか」


私の反応に佐原くんが苦笑する。


「いや、それはまぁそうなんだけども……!まさか佐原くんに褒められるとは思っておらず……」

「ちゃんと似合ってま……」

「ちょ……!もういいっ、いいから!皆まで言わないで……!」


悪戯っぽく弧を描いた唇から再び紡がれそうになったその褒め言葉。

きっとお世辞かもしれないけれど、それでもそれに耐えきれなくなった私は言い切られる前に慌ててストップをかけた。


「はは、中村、良い仕事しましたね。後で褒めておきます。……ああ、でも和泉さんからしたらこの変身はちょっと複雑な心境かも……」


真っ赤な顔でわたわた両手を振る私を可笑しそうに眺めていた佐原くんが、周囲に視線を巡らせながら顎に手を当て何やらぶつぶつ呟いている。


「……ん?」

「……いや、何でもありません。それより和泉さん、もう来てるみたいですけど」

「えっ⁉︎」


あの飲み会の時にたった一度写真を見ただけなのに、和泉さんの顔を佐原くんは覚えていたのだろうか。


窓の外に視線を向けた佐原くんにつられて、私もまだ冷めやらぬ赤い頬を携えたまま同じ方を見やる。

すると、そこには困ったように眦を下げてこちらを見つめる和泉さんが佇んでいた。
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