紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
でも私と目が合うと、ハッとしたようにその表情を柔らかく解し、片手を上げる。
慌てて腕時計を見ると、いつの間にかもう約束の時間になろうとしているところだった。
「わっ、佐原くんごめん、もう行くね!お疲れ様!」
「はい。お疲れ様でした」
おざなりに別れを告げた私に苦笑いを浮かべる佐原くんに見送られ、急いで和泉さんのところへ向かう。
あんなにどんな顔して会えばいいの、なんて思っていたくせに、いろいろ慌ただしかったせいでそんなの気にしている余裕はなかった。
「和泉さんっ。すみません、お待たせしちゃいましたね⁉︎」
エントランス近くまで移動してくれていた和泉さんに駆け寄って行くと、彼は眩しそうに目を細めた。
「……ううん、僕も今来たところだよ。ちょうどタクシーを降りたところで灯ちゃんが見えたから。こちらこそお待たせ」
「いえいえ、全然です!タクシーだったんですね?」
「うん、今日は灯ちゃんとお酒を飲みたかったからね。……ところで灯ちゃん。ひょっとしてさっきの彼に、もう言われちゃった?」
「さっきの彼に……?ああ、佐原くんですね。何をですか?」
「可愛いって」
「〜〜……っ⁉︎」
「だって今日の灯ちゃん、いつも以上に魅力的だから」