紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
ぴたりと足を止め振り返った和泉さんと目が合い、ぴくりと肩が揺れた。
「……そっか、3番目か……。それはだいぶ出遅れたな」
悲しげに下がった眉、は一瞬で。
次の瞬間にはきゅっ、と妖艶に弧を描いた口角。
「じゃあその分、これからこの可愛い灯ちゃんは僕が独り占めさせてもらうね?」
和泉さんは繋いでいる手を持ち上げて、そこにちゅ、とキスを落とす。
「んな……っ⁉︎」
ボボボボボッ!首の付け根まで朱に染まった感覚があった。
一矢報いるはずがあっさり返り討ちに遭い、繋いでいない方の手で咄嗟に口元を隠す。
「……可愛い」
でも、そんな私を愛おしそうに見つめた和泉さんに最後のトドメを刺され。
私はもう今後一切和泉さんに対して一矢報いようなんて大それたことを思うのは止めようと心に誓ったのだったーーーー。
ーーーちなみにその様子を、頬を染めながらロビーの窓に張り付くようにして覗いていた珠理ちゃんが佐原くんにたしなめられていたことなんて、その時の私は知る由もなかったのだった。