紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「……灯ちゃん。それは大したことだよ。それで中学生の灯ちゃんは傷ついたんでしょ?それだけで、それはもう十分大したことだし、同じ立場なら僕だって傷つくよ」
和泉さんが眉間に皺を寄せていつになく険しい顔をしている。こんな和泉さんを見るのは初めてだった。
でも、和泉さんが今あの時傷ついた中学生の私に寄り添ってくれたことで、ただそれだけであの頃の私が少し救われた気がして、目頭が熱くなる。
……どうしよう。ワインのせいで、ちょっと情緒が不安定かもしれない。
目に力を込め、何とかそれを押しとどめて私は続けた。
「……それ以来、人とは一定の距離を置いて付き合って来ました。私なんかに好かれても迷惑だろうと、誰かを好きになることも避けて来ました。ーー……そしたらいつの間にか、どういう気持ちを好きって言うのか、分からなくなりました」
「………」
「はは、すいません、こんなつまらない昔話。……だけど、いつもどストレートに気持ちを伝えてくれる和泉さんだからこそ、ちゃんと伝えておきたいと思いました、私のことを」
わざとなんてことない風に口角を持ち上げ、明るい声を出して締めくくる。