紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】


ーー和泉さんにも、"好き"って気持ちが分からない時があったんだろうか。

だけど和泉さんは、過去にその"好き"という気持ちが自然に芽生える相手に出会えたことがあるーー?


こぼれた涙を拭っていた顔をそっと上げた。

すると、とても優しい色をした双眸(そうぼう)にぶつかる。


ひょっとして今、その女性(ひと)のことを思い浮かべていたのだろうか。


そう思った瞬間、少しだけ胸がモヤっとした気がした。



「でも、灯ちゃんが2度目の"好き"って気持ちを知る相手は、出来れば僕がいいなって思う」

「……っ!またそんなどストレートなことを……っ」


だけどそんな和泉さんのどストレートなセリフに、その小さなモヤモヤはあっという間に吹き飛ばされてしまった。


「……灯ちゃん。僕はこれからも灯ちゃんにどストレートに気持ちを伝えるけど。鬱陶しくなったら今みたいにウザいって怒ってくれていいよ」

「……ウザいとは言ってませんっ!」

「はは!そうそう。灯ちゃんは灯ちゃんのまま、難しく考えずにそうやって自然体でいてくれたらいい。それで、僕の隣にいることがとても楽で居心地が良いと思ってもらえたら僕の勝ち」

「何の勝負ですか、それ」


思わず吹き出してしまう。


「うん、何の勝負だろうね。でもそうやってじわじわと、灯ちゃんが一定の距離を取る暇もないくらい、気づいたら僕が隣にいるのが当たり前って身体にしちゃうから。覚悟しておいて?」

「……っ、和泉さん、ウザいですっ」

「はは……っ!言ったね?」


グラスに残っていたワインを一気に飲み干し、真っ赤な顔で照れ隠しにそう言い捨てれば、和泉さんは嬉しそうに破顔した。
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