紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
ーー誰にも話せないまま、喉の奥に刺さった小骨のように私の中でずっと燻っていた苦い思い出。
でも今日和泉さんに話せたことで、和泉さんが寄り添ってくれたことで、それが昇華された気がする。
不覚にも涙を見せてしまったけれど。
私は涙と一緒に小骨も流れていったような、そんなすっきりとした気持ちになっていた。
でも、実は和泉さんの旧友でここのオーナーシェフだという篠原さんが、挨拶がてら自らデザートを運んで来てくれた時。
「……おい恭加。お前、オレの店で何女性泣かせてんだよ」
私の目を見て、メガネ越しにも泣いたことが分かってしまったらしいシェフに和泉さんが詰め寄られる事態になってしまい。
「あ、違います違います!これは私が勝手に……」
「……うーん、否定は出来ないな」
私が慌てて弁解しようとするも、和泉さんが苦く笑いながらそう言うから。
「うっ……、まぁ確かにそうとも言えますけど、今それ言っちゃったらあらぬ誤解を生んじゃうだけですからね⁉︎」
「ははっ」
そう言い募れば、彼は可笑しそうに笑った。