紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「……ったく……。オレはお前がここに誰かを連れて来たってだけで驚いてんのに、そんな顔見せられたらさらに驚き桃の木だわ」
「……皇、古いって突っ込まれるよ?灯ちゃんに」
「いや、突っ込む気はないですけど⁉︎」
「ぶっ……!ナイス突っ込み、灯ちゃん」
結果的に突っ込んだ形になってしまい、今度は篠原さんが吹き出した。
ラグビーをやっていたと言われても納得出来そうながっちりとした長身に真っ白なシェフコートを纏った篠原さんは、さっぱりとした黒髪にきゅっと釣り上がった切長の瞳が印象的。
それが一見近寄り難そうな雰囲気だけど、笑った瞬間下がった目尻の笑い皺が、途端に親しみやすさを生む。
おお、これはかなりのギャップだ。
「皇が灯ちゃんって呼ばないでくれる?」
「だって名字知らねーし」
「深町さんです」
「はいはい、深町さんね」
和泉さんだって初対面から灯ちゃん呼びだったくせに、眉間に皺を寄せちょっと拗ねたように言うのが何だかおかしくて、私は篠原さんと顔を見合わせて苦笑してしまった。
私といる時の和泉さんは、いつも大人で落ち着いていて紳士的で。かと思えば急にドキドキさせることを言ったりやったりしていつも私を振り回すけれど。
旧友だという篠原さんとのやりとりの中に少しだけ等身大の和泉さんを見た気がして、ちょっと嬉しくなった。