iDOLの恋人~好きになった人は超有名人でした~
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「結城さん。社長がお呼びです。昼休みは食事を取る前に社長室までとおっしゃってます。危急の用とのことです。」
内線やスマホからではなくわざわざ席まで秘書を向かわせるのは周りの人間に知らしめるためだ。
結城は重要な任務があるからサボっているわけではないとわからせるため。
大学を卒業するとき、お父さんからどうしたいかと打診された。
他の会社でも莉奈ならいくらでも喜んで採用するだろうが…と。
お父さんとはずっと本音で話したことはなかった。
話せなかった。
テオのおかげで少しずつわだかまりがなくなってきてはいたけれど、まだ許せない両親と腹をわって話せるわけもなかった。
けれどその時はじめてお父さんと心を割って話ができて、そして結城商事で働くことを決めた。
「莉奈は知らないだろうが…俺は昔、莉奈のお母さんと駆け落ちしたんだよ。」
「え?」
びっくりした。
何その話。
「こっぱずかしい話だが、お母さんには婚約者がいてね。その男と結婚しそうだったから、奪って逃げた。それで既成事実を作ってやろうと思って…できたのが莉奈だ。」
「……」
絶句…。
お父さんはクスクスと笑っていたけど…。
「その後許してもらって…けど…すぐにお母さんは…」
少し目尻が濡れてる気がするのは気のせいかと思ったけど…そうじゃないみたいで…。
「お父さんは…お母さんを愛していたの?」
知りたいのはそれだけだった。
だってお母さんが死んでしまったことは事実なのだから…
「ああ。」
しんみりとしたその低音ボイスは…すべてを物語っていた。
決めた。
「わたし、結城商事に就職します。覚悟はできたわ。お父さん。」
「莉奈がきてくれたら心強いよ。」
お父さんは満足そうに笑っていた。
まだ父のことを許せてるわけではない。
けど…
わたしはそのとき、一生結城商事のために働くだろうとなんとなく思ったのだった。
内線やスマホからではなくわざわざ席まで秘書を向かわせるのは周りの人間に知らしめるためだ。
結城は重要な任務があるからサボっているわけではないとわからせるため。
大学を卒業するとき、お父さんからどうしたいかと打診された。
他の会社でも莉奈ならいくらでも喜んで採用するだろうが…と。
お父さんとはずっと本音で話したことはなかった。
話せなかった。
テオのおかげで少しずつわだかまりがなくなってきてはいたけれど、まだ許せない両親と腹をわって話せるわけもなかった。
けれどその時はじめてお父さんと心を割って話ができて、そして結城商事で働くことを決めた。
「莉奈は知らないだろうが…俺は昔、莉奈のお母さんと駆け落ちしたんだよ。」
「え?」
びっくりした。
何その話。
「こっぱずかしい話だが、お母さんには婚約者がいてね。その男と結婚しそうだったから、奪って逃げた。それで既成事実を作ってやろうと思って…できたのが莉奈だ。」
「……」
絶句…。
お父さんはクスクスと笑っていたけど…。
「その後許してもらって…けど…すぐにお母さんは…」
少し目尻が濡れてる気がするのは気のせいかと思ったけど…そうじゃないみたいで…。
「お父さんは…お母さんを愛していたの?」
知りたいのはそれだけだった。
だってお母さんが死んでしまったことは事実なのだから…
「ああ。」
しんみりとしたその低音ボイスは…すべてを物語っていた。
決めた。
「わたし、結城商事に就職します。覚悟はできたわ。お父さん。」
「莉奈がきてくれたら心強いよ。」
お父さんは満足そうに笑っていた。
まだ父のことを許せてるわけではない。
けど…
わたしはそのとき、一生結城商事のために働くだろうとなんとなく思ったのだった。