極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「お腹すいてたみたいだね」
「ええ」

男性が差し出したドッグフードとミルクをあっという間に平らげてしまったワンちゃんは、用意してもらったクッションの上で丸くなりウトウトし始めた。

「フフ、かわいい」
無意識に声が出てしまう。

生き物を飼うって事はとても大変な責任だと認識している。いい加減な気持ちで飼おうと思うべきではないし、途中で投げ出すなんて論外。
それでも、私はこの子に心を奪われた。

「本当に、預かってもらってもいいですか?」
私にとってはありがたい話だけれど、そんなことをしても男性には何のメリットもないのに。

「いいんですよ。この子かわいいし、一晩預かります。明日は休みをとっているから夕方までここにいてもらっても構わないから」
「ありがとうございます。明日には準備をして必ず迎えに行きますので」

あと1時間位したらクリーニングに出した服が戻ってくるはず。それから急いで家に帰りこの子を迎える準備をしよう。
朝1番でゲージと餌とリードとその他諸々必要なものを買いに行き午前中には迎えに来れると思う。

よしっ。
ワンチャンを迎える見通しが立ったところで小さくガッツポーズ。

ここから家までのタクシー代もワンチャンを迎える準備費用も痛い出費ではあるけれど今月は売り上げも悪くなかったし何とかなるだろう。
小さいけれど自分の店を持つ身としては頭の中でそんな電卓を叩いていた。
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