極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「いいんですよ、別に隠さないといけないわけでもないので。ただ40歳手前の初産が少し照れ臭かっただけ」

「そうですか」

今時40歳の出産だってなにも恥ずかしいことはない。
妊婦だってだんだん高齢化しているんだから。

「私ももうすぐ6ヶ月なんです。初めてのお産で不安ばかりですけれど、母親が楽しみにしていないと赤ちゃんにも伝わるって言われて、できるだけ良いことだけ考えることにしているんですよ」

出産や子育てに不安を感じている私にそう言ったのは主治医である産科部長の栗山先生。
自身も4人の子供を産み育てた先輩ママの言葉は説得力があって、自然と納得させられた。

「そうね、せっかく授かった命だものね」
サラサラのショートヘアーをかきあげてにっこり微笑んだ女性。

「そうですよ、悪阻だって一生続くわけでもないし、頑張れば赤ちゃんに会えるんですから」
おそらく10歳は年上のお客さんについ説教臭く言ってしまった。

クスッ。

ん?

その様子を見ていたもう一人のお客さんの含み笑いに、何か笑われるようなことしたかなと周りを見る。

「この人ね、医者です。それも産科医」
「はあ?」

私、もしかして産科のお医者さんに偉そうなこと言った。
ヤダ、恥ずかしい。
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