極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「美貴さん」
「はい」

翌朝。
ゆっくりと起き出した私と太郎さんは、パンとコーヒーとベーコンエッグだけの簡単な食事を前に向き合っていた。

「この責任はきちんととるつもりだから」
「えっ」

この、責任?
えっと、それは、昨日の・・・・ってことかしら?

「美貴さんにもいろんな事情があるだろうけれど、2人でいい妥協点を見つけていこう」
「妥協点?」

なんだかすごく話がかみ合っていない気がする。
どこかで大きなボタンの掛け違いがあるような・・・

「大丈夫、どんなことがあっても美貴さんは僕が守るから」
「え、ええっと、太郎さん、ちょっと待って」
さすがにこのままではいけないと、私が口をはさんだ。

どうしたのと太郎さんが首を傾げている。

「申し訳ないけれど、私は太郎さんに責任をとってもらうつもりはありません。一夜の関係としていい思い出にする分でも、このまま太郎さんとの関係を続けようと思っているわけではないわ」
「そういうわけにはいかないよ。昨夜の僕は君を」
「だから、お互い納得の上での関係なんだからいいじゃない」

勢いで関係を持ってしまい逃げようとする男は多いけれど、太郎さんのように『責任をとる』なんて言い出す人もいるのね。
それが太郎さんらしくもあるんだけれど。

「それでもこのままってわけにはいかないよ」
「だから、私はこのままでいいの」

私の人生に男の人は必要ない。そう決めているんだから。
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