極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
カランカラン。

「いらっしゃいま、せ」
ドアの開く音に反応して声をかけてから驚いた。

何で、今ここに・・・

「こんにちわ」

大きなカバンを抱えて店に入ってきた男性客。
一見して出張で来たビジネスマン風。

「アイスコーヒーをお願い」
誰も案内したわけでもないのに太郎さんと一席空けたカウンター席に座った。

はあー、もう。
何でこんなタイミングで来るかなあ。
まあね、連絡しろって言われながら何の返信もしなかった私が一番悪いんだけれど・・・それにしたって、今じゃないでしょう。

「これ、桃花とお母さんから」
カウンターに紙袋がドンと乗せられる。

「ありがとう」
カウンターの中から受け取る私を太郎さんが見ている。

「どうでもいいけれど、返信する時間もないのか?」
「はあ?」
「メール、しただろ?」
「だって・・・」

こっちにはこっちの事情があったのよ。と叫びたいけれどできるはずもなく、私はふてくされることしかできなかった。
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