迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

次期長となる者(五)

 神獣というのは、おそらくシンのことだろう。

 しかし付き従うというのは少し違う。

 シンはただ私に付き合ってくれているだけで、私はその対価を払っているだけの存在だ。

 もしかするとシンは私に情が移ってよくしてくれているかもしれないが、付き従うという言葉は少し違うだろう。



「神獣を……」

「彼とは、仲良くさせてもらっていますが、それはそういう関係ではないですし」

「どちらにしろ、アレが力を貸すというのはそういうことだ」



 長の言葉に、戒は苦虫をかみ潰したような顔をしながら黙り込む。

 もしかして歴代もシンは女の人にだけ力を貸して、あんなエロい請求をしてきたのかもしれない。

 もしそうなら全て納得がいく。戒は男だし、シンは興味がなさそうだ。


 いやいやいやいや。

 そうなると、このままでは私が長にされてしまう。

 こんな田舎からとっとと出ていきたいのに、長になればそれも出来ない。

 なんとかして穏便に、戒に長になってもらわないと。



「ともかくこれで宣言は出した。あとは二人次第さ」

「俺は引く気はありません。必ずや、長になります」

「……あ、あのう……」



 譲りますと言いかけた言葉を飲み込む。

 明らかに怒っている戒に今そのことを告げても、おそらくは喜びはしないだろう。

 それよりも逆に自分のことを見下しているのかと勘違いさせかねない。

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