迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

次期長となる者(六)

「意見がないなら、今日はここまでとする」



 長は席を立ち、部屋を出ていく。

 同時に、先ほどまでの視線もすっと消えた。



「とにかく俺はお前を認めない。ただ名に縛られるだけの者になど」



 吐き捨てるように戒は言うと、そそくさと部屋から出ていった。



 名に縛られる、そういえばシンもそんなことを会った日に言っていた気がする。

 縛られるというのはどういう意味だろう。

 戒の言うように関という名字のことを言うのならば、戒だって同じはずだ。

 しかし戒のあの言い方は、縛られているのは私だけだと言っているようだった。

 そうなると戒と私の違いはなんだろうか。



「やーめた。考えても分からないものは、分かんないもん」



 一人残された部屋で大きく伸びをした後、立ち上がった。

 考えても分からないものを、こんなところで悩んでも答えは出ないだろう。

 それならばこんなところに残っている必要性はない。


 歩き出した私の目には、無数のずらりと並んだ座布団たちが写る。

 頭のどこかで、やめなさいという自分がいるのを無視し私はその一つに触れた。


 先ほどまで確かに誰かが座っていた。

 そう断言できるほど、その座布団は生温かった。
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