ある日、マンガ家が落ちていて
笹岡はしんどそうな顔をした。ずっと笹岡を苦しめている何かがあるんだろうな、とはあゆみも思っていた。そうか、仕事でどん詰まりだったんだ。そこまで考えてはっとした。
「じゃ…居所がバレて困るって、編集者から逃げてるんですか?」
「そうです。僕の行きそうなところにはことごとく連絡がいっていて…それで、野宿を覚悟してたわけです」
行き着けはチェックが入っているから、じゃあ野宿って…極端すぎる、とあゆみは呆れた。
折りよく、飲み物が運ばれてきた。グラスをかちんとあわせて、乾杯する。カクテルをひとくち飲むと、甘い中に少しアルコールが入っていて美味しかった。普段はビール党のあゆみも、たまにはこういう女の子っぽいのもいいな、と改めて思う。
外商の仕事はともかく、デパ地下の時は、男性社員と競うように働いていた。どこか自分の女性っぽさを知らぬうちに封印していたようなところがあった。
でも、今夜は違う。ピンクのワンピースを着て、女子向けの可愛いお店で普段は注文しないようなカクテルを飲んでいる。
しかも、目の前にいる尊敬している漫画家は、あゆみに女子としての意見を求めている。
なんだか…自分が女子だっていうことを、再確認するような夜だなあ…。
もうひと口、カクテルを味わってから、あゆみは口を開いた。
「あの、私は、立派な編集者でもなんでもないから、いち読者の意見として聞いてください」
笹岡は、目を輝かせた。
「はい、そういう意見こそ、聞きたいんです」
「最近の傾向で、主役のことを近くで見守っていた二番手の男性キャラとくっつく、という流れがあるじゃないですか」
「そうそう。同級生とか、幼なじみとか、ね」
「私は、あれには異を唱えたいんです。主人公が、初恋の男性への気持を、最後まで貫き通す。それこそが、私には少女漫画の王道だと思うんです。主人公は、ずっと物語の中で頑張っているわけですよ。夢を追いかけて、恋を追いかけて。そのまっすぐな姿に、私は感動するんです。それを、近くにいてくれたからって、初恋の男を忘れるってそれ、なんか違うんじゃないですか」
「ほう」
「じゃ…居所がバレて困るって、編集者から逃げてるんですか?」
「そうです。僕の行きそうなところにはことごとく連絡がいっていて…それで、野宿を覚悟してたわけです」
行き着けはチェックが入っているから、じゃあ野宿って…極端すぎる、とあゆみは呆れた。
折りよく、飲み物が運ばれてきた。グラスをかちんとあわせて、乾杯する。カクテルをひとくち飲むと、甘い中に少しアルコールが入っていて美味しかった。普段はビール党のあゆみも、たまにはこういう女の子っぽいのもいいな、と改めて思う。
外商の仕事はともかく、デパ地下の時は、男性社員と競うように働いていた。どこか自分の女性っぽさを知らぬうちに封印していたようなところがあった。
でも、今夜は違う。ピンクのワンピースを着て、女子向けの可愛いお店で普段は注文しないようなカクテルを飲んでいる。
しかも、目の前にいる尊敬している漫画家は、あゆみに女子としての意見を求めている。
なんだか…自分が女子だっていうことを、再確認するような夜だなあ…。
もうひと口、カクテルを味わってから、あゆみは口を開いた。
「あの、私は、立派な編集者でもなんでもないから、いち読者の意見として聞いてください」
笹岡は、目を輝かせた。
「はい、そういう意見こそ、聞きたいんです」
「最近の傾向で、主役のことを近くで見守っていた二番手の男性キャラとくっつく、という流れがあるじゃないですか」
「そうそう。同級生とか、幼なじみとか、ね」
「私は、あれには異を唱えたいんです。主人公が、初恋の男性への気持を、最後まで貫き通す。それこそが、私には少女漫画の王道だと思うんです。主人公は、ずっと物語の中で頑張っているわけですよ。夢を追いかけて、恋を追いかけて。そのまっすぐな姿に、私は感動するんです。それを、近くにいてくれたからって、初恋の男を忘れるってそれ、なんか違うんじゃないですか」
「ほう」