ある日、マンガ家が落ちていて
「残念ねえ。若い子の恋バナ聞くの大好きなんだけど。まあ、いいわ。来月もあなた、来てくれる?お中元の相談に乗ってくれないかしら」
赤かった顔が一気に冷め、正気に戻った。
「ありがとうございます!準備して参りますっ!」
あゆみは深々とお辞儀をして御礼を言った。先週と同じく、撃沈するかもしれないという恐れがあった。やっぱり担当は他の人とチェンジして、と言われる可能性だってあった。それをあゆみを指名してくれて、大事な贈答品となるお中元の相談までしてくれるという。
予想をはるかに上回った結果だった。
そして、今、ビールを晴れやかな気持で見繕っている、というわけだ。見かけない銘柄のビールがあった。
あ。こんな珍しいの、見せたら喜ぶんじゃないかな。
自然に、そんな気持がわいた。頭に浮かんでいるのははにかむような顔をして笑っている笹岡だった。
あんなに何度もあゆみの料理を美味しいと言ってくれた。叶うことなら、またうちの炬燵で一緒に飲みたい。あの時はあるもので、ざっと作ったお惣菜だった。もし今度があるのなら、笹岡の好みをもっとしっかりリサーチして、ばばーんとすごい料理を作って驚かせたい。
「…なんて、思っても、無理か」
あゆみはひとりごちて、手にしたビールを籠に入れた。支払いをすませると、まっすぐにアパートに帰った。部屋に入ると、望がポテチを食べながら、ゲームをしていた。
「もう、夕飯前にお菓子、食べないでよ」
ビールを専用冷蔵庫にしまいながら、あゆみは言った。
「笹岡大先生と遊んで、弟をハブにした姉の言うことはききません」
ゲーム機を動かしながら望が言う。
「それは、あんたがスマホの電源切っちゃうのがいけないんでしょ。どうやって連絡とれっていうのよ」
「しかも、コミックスにサインしてもらってないなんて、なんて不出来な姉だろう」
わざとらしく棒読みで言うのが憎らしかった。
「しょうがないでしょ、もてなすのに必死だったんだから。私だって欲しかったわよ、サイン」
赤かった顔が一気に冷め、正気に戻った。
「ありがとうございます!準備して参りますっ!」
あゆみは深々とお辞儀をして御礼を言った。先週と同じく、撃沈するかもしれないという恐れがあった。やっぱり担当は他の人とチェンジして、と言われる可能性だってあった。それをあゆみを指名してくれて、大事な贈答品となるお中元の相談までしてくれるという。
予想をはるかに上回った結果だった。
そして、今、ビールを晴れやかな気持で見繕っている、というわけだ。見かけない銘柄のビールがあった。
あ。こんな珍しいの、見せたら喜ぶんじゃないかな。
自然に、そんな気持がわいた。頭に浮かんでいるのははにかむような顔をして笑っている笹岡だった。
あんなに何度もあゆみの料理を美味しいと言ってくれた。叶うことなら、またうちの炬燵で一緒に飲みたい。あの時はあるもので、ざっと作ったお惣菜だった。もし今度があるのなら、笹岡の好みをもっとしっかりリサーチして、ばばーんとすごい料理を作って驚かせたい。
「…なんて、思っても、無理か」
あゆみはひとりごちて、手にしたビールを籠に入れた。支払いをすませると、まっすぐにアパートに帰った。部屋に入ると、望がポテチを食べながら、ゲームをしていた。
「もう、夕飯前にお菓子、食べないでよ」
ビールを専用冷蔵庫にしまいながら、あゆみは言った。
「笹岡大先生と遊んで、弟をハブにした姉の言うことはききません」
ゲーム機を動かしながら望が言う。
「それは、あんたがスマホの電源切っちゃうのがいけないんでしょ。どうやって連絡とれっていうのよ」
「しかも、コミックスにサインしてもらってないなんて、なんて不出来な姉だろう」
わざとらしく棒読みで言うのが憎らしかった。
「しょうがないでしょ、もてなすのに必死だったんだから。私だって欲しかったわよ、サイン」