王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく
晴れの日、靴職人はひざまづく
「ん……」

 足がこそばゆい。

 自分はいったいどうしたのだろう。
 ……檜山と荒々しく抱き合っている夢を見ていた気がする。

 果てのない飢えと乾きを、互いを奪いあうことで満たした。
 檜山がどうしようもなく恋しい末に見てしまった、はしたない夢。

 今まで生きてきたなかで一番幸せな時間だった。
 すうと、晴恵の(まなじり)から涙が流れ星のように落ちる。
 

「起きたか」

 足元から声がした。

 急速に意識が覚醒してくる。
 目の前には晴恵が座ったり、陽菜が眠ってしまった1人掛けのソファが置いてある。
 自分が横になっているこの三人掛けのソファにはいつも檜山が座っているので、目線が変わって不思議な気分だ。

 夢ではない。
 檜山の工房で性急に愛を交わし合って、晴恵はそのまま眠ってしまったらしい。
 肌の上に彼の上着がかけられているのが、むしょうに愛おしい。

「何をしているの?」

 声をかけて起きあがろうとしたが、制止された。
 檜山は上半身裸のままで彼女の足先にかがみ込んでいる。
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