絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
美澄は必死に声を張り上げた。
そのとき、急に締め付けるような痛みが下腹部に走った。くらりと一瞬眩暈がする。
(――え?)
ぶつりと切れたような衝撃が走った。何かが流れてくる感覚がする。足元を見ると、透明の液体がぽたぽたと滴っていた。
(うそ――破水)
気付いたときには、だんだんとお腹に鈍痛を感じ、美澄は呻くようにお腹をおさえ、膝をつく。
「誰か! 妊婦さんが!」
「いた……っ」
陣痛がはじまってしまったのかもしれない。刻々と痛みは強くなる。その場で、力が入らなくなり息を整えるのでやっとだ。
(だめ、こんなところじゃ……!)
助けられなくてはいけない怪我人が大勢いるかもしれないのだ。今、美澄が倒れるわけにはいかないし、こんな混乱している場で、衛生環境上にもよくない。自分でタクシーを呼んで、それから……。
必死に耐えようとする美澄の努力もむなしく、どんどん痛みは強くなり、意識が遠くなっていく気配すらあった。
(透夜さん……)
美澄は透夜のことを思い浮かべていた。絶対にこの子は守らなければならない。自分も必ず無事でいなければ。
しかし痛みが強まり呼吸は浅くなり、どんどん汗が流れていく。そこから先はもう考えることを放棄し、お腹を守ることだけで精一杯だった。
***
「覚悟、か」
透夜は美澄との通話を終えたあと、逞しくなった彼女を想い、表情を綻ばせた。
『東雲先生は、ご自身の仕事を優先してください。私だって、一応医者の妻なんですから、そのくらいの覚悟はありますよ。それから、母親になる覚悟も』
(もともと出逢ったときから、逞しい女だと思ったけどな)
そういうところが好ましくもあるのだが。
今日はなるべく早く帰れるようにすると告げた。退院できたからといってすぐに無茶をする彼女のことが心配だった。
それから二時間ほど経過したとき。
神妙な面持ちをした服部が駆けつけてくる。
「東雲、こっちに急いでくれ」
「服部、どうした」
「奥さんが――」
病院とマンションのちょうど間にある交差点付近で多重事故が発生。その事故に巻き込まれ、数名救急車で運ばれてきた。その中に妊婦がいたらしい――。
その言葉を聞いたとき、他のことは何一つ考えられなくなった。時が止まったようにさえ感じた。否、止まってくれと願っていた。
そのとき、急に締め付けるような痛みが下腹部に走った。くらりと一瞬眩暈がする。
(――え?)
ぶつりと切れたような衝撃が走った。何かが流れてくる感覚がする。足元を見ると、透明の液体がぽたぽたと滴っていた。
(うそ――破水)
気付いたときには、だんだんとお腹に鈍痛を感じ、美澄は呻くようにお腹をおさえ、膝をつく。
「誰か! 妊婦さんが!」
「いた……っ」
陣痛がはじまってしまったのかもしれない。刻々と痛みは強くなる。その場で、力が入らなくなり息を整えるのでやっとだ。
(だめ、こんなところじゃ……!)
助けられなくてはいけない怪我人が大勢いるかもしれないのだ。今、美澄が倒れるわけにはいかないし、こんな混乱している場で、衛生環境上にもよくない。自分でタクシーを呼んで、それから……。
必死に耐えようとする美澄の努力もむなしく、どんどん痛みは強くなり、意識が遠くなっていく気配すらあった。
(透夜さん……)
美澄は透夜のことを思い浮かべていた。絶対にこの子は守らなければならない。自分も必ず無事でいなければ。
しかし痛みが強まり呼吸は浅くなり、どんどん汗が流れていく。そこから先はもう考えることを放棄し、お腹を守ることだけで精一杯だった。
***
「覚悟、か」
透夜は美澄との通話を終えたあと、逞しくなった彼女を想い、表情を綻ばせた。
『東雲先生は、ご自身の仕事を優先してください。私だって、一応医者の妻なんですから、そのくらいの覚悟はありますよ。それから、母親になる覚悟も』
(もともと出逢ったときから、逞しい女だと思ったけどな)
そういうところが好ましくもあるのだが。
今日はなるべく早く帰れるようにすると告げた。退院できたからといってすぐに無茶をする彼女のことが心配だった。
それから二時間ほど経過したとき。
神妙な面持ちをした服部が駆けつけてくる。
「東雲、こっちに急いでくれ」
「服部、どうした」
「奥さんが――」
病院とマンションのちょうど間にある交差点付近で多重事故が発生。その事故に巻き込まれ、数名救急車で運ばれてきた。その中に妊婦がいたらしい――。
その言葉を聞いたとき、他のことは何一つ考えられなくなった。時が止まったようにさえ感じた。否、止まってくれと願っていた。