絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「先生、奥様は無事です。ただ、赤ちゃんの様子が――」
透夜の顔から血の気が引いた。
お産は何が起こるかわからない。万が一にも、子どもを助けるために、母親の寿命を削ることだってあるのだから。もしも美澄が選択を迫られたとき、あいつならばきっと子どもを優先するだろう。
だめだ、そんなことは許さない。
美澄、おまえは生きていてくれ。子どもと一緒に、どちらも無事でいてくれ。
分娩室に入ると、対応にあたっている産科医がこちらを見た。
「東雲先生」
「どういう状況なんだ」
「へその緒がまきついて、時間がかかっています。あと、もう少しなんですが……」
透夜は時間を確認する。まもなくオペの時間が迫っている。自分の代わりに引き受けられるやつは……透夜は一瞬考えた。服部は緊急手術に入った。他の医師も手が塞がっている。主治医の自分がオペを投げ出すわけにはいかない。だが――。
「透夜さん」
美澄に呼ばれ、透夜はハッとする。
「オペがあるんじゃないですか。東雲先生を待ってる人がいますよ」
透夜は、とっさに美澄の手を握った。
「私なら、このとおり大丈夫です。絶対に、あなたと幸せになるって決めたから。何があってもこの子を産んで、私も健康であなたに会うんだって、覚悟してるんです」
凛とした彼女のやわらかな笑顔に、透夜は胸を打たれていた。
信じてほしい、そして信じて待っている、と彼女の眼差しが訴える。
そうだった。もう自分は誰も死なせたくないんだった。
「行ってくる」
美澄が頷く。
絶対に大丈夫だ、と心に強く彼女の笑顔を焼き付ける。
透夜は迷いを振り払い、オペに向かう。
美澄は、生きようとしている。お腹の子は産まれようと頑張っている。
自分にできることはなんだ。
今、目の前の患者を助けることだ。透夜はそれだけを考えていた。
***
波のように襲ってくる陣痛と闘いながら、赤ちゃんが巻き付いている首を丁寧にほどいて助けようと、必死に頑張ってくれている先生たちを見た美澄は、オペに戻って行った透夜のことを思い浮かべた。
本当は心細い。ずっとそばにいてほしい。けれど、さっき言ったことは嘘じゃない。
透夜の顔から血の気が引いた。
お産は何が起こるかわからない。万が一にも、子どもを助けるために、母親の寿命を削ることだってあるのだから。もしも美澄が選択を迫られたとき、あいつならばきっと子どもを優先するだろう。
だめだ、そんなことは許さない。
美澄、おまえは生きていてくれ。子どもと一緒に、どちらも無事でいてくれ。
分娩室に入ると、対応にあたっている産科医がこちらを見た。
「東雲先生」
「どういう状況なんだ」
「へその緒がまきついて、時間がかかっています。あと、もう少しなんですが……」
透夜は時間を確認する。まもなくオペの時間が迫っている。自分の代わりに引き受けられるやつは……透夜は一瞬考えた。服部は緊急手術に入った。他の医師も手が塞がっている。主治医の自分がオペを投げ出すわけにはいかない。だが――。
「透夜さん」
美澄に呼ばれ、透夜はハッとする。
「オペがあるんじゃないですか。東雲先生を待ってる人がいますよ」
透夜は、とっさに美澄の手を握った。
「私なら、このとおり大丈夫です。絶対に、あなたと幸せになるって決めたから。何があってもこの子を産んで、私も健康であなたに会うんだって、覚悟してるんです」
凛とした彼女のやわらかな笑顔に、透夜は胸を打たれていた。
信じてほしい、そして信じて待っている、と彼女の眼差しが訴える。
そうだった。もう自分は誰も死なせたくないんだった。
「行ってくる」
美澄が頷く。
絶対に大丈夫だ、と心に強く彼女の笑顔を焼き付ける。
透夜は迷いを振り払い、オペに向かう。
美澄は、生きようとしている。お腹の子は産まれようと頑張っている。
自分にできることはなんだ。
今、目の前の患者を助けることだ。透夜はそれだけを考えていた。
***
波のように襲ってくる陣痛と闘いながら、赤ちゃんが巻き付いている首を丁寧にほどいて助けようと、必死に頑張ってくれている先生たちを見た美澄は、オペに戻って行った透夜のことを思い浮かべた。
本当は心細い。ずっとそばにいてほしい。けれど、さっき言ったことは嘘じゃない。