絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「……産声が、凛とした音色に聞こえたんだ。冬の澄んだ空気の中、心にまっすぐに響いてきた」
 照れくさかったけれど、透夜は自分の想いを告げる。
 美澄は頷いて、笑顔を咲かせた。
「……凛音ちゃん。素敵な名前だわ。すごくいいと思います」
「あの子が気にいるといいが」
 お互いに顔を見合わせて微笑み合う。
「凛々しく、まっすぐに、勇ましい、凛とした、人になってほしいな」
「そうだな。美澄、おまえみたいに」
 からかわれた美澄は、また頬を赤くしていた。
 それから、新生児から戻ってきた赤んぼう――凛音を抱かせてもらったのだが。
 うっかり頬を緩ませている透夜に、美澄はじっと何かを言いたげにしていた。
「なんだ。言いたいことがあるなら受け付ける。似合わないとか、俺らしくないとか、柄にもないと思っているんだろ。一応、それは自覚しているぞ」
「違いますよ。私が心配しているのは……溺愛の矢印、変わったりしません?」
 透夜は意表を突かれた顔をし、ふっと笑みをこぼした。
「今からやきもちか? それはおまえの方じゃないのか」
「娘にデレデレな医者が多いって、服部先生が言ってましたから」
「またあいつは余計なことを――それがなければ、いいやつなんだがな」
 服部のにやけた顔を思い浮かべ、透夜はため息をついた。
「実際はどうなんですか?」
「俺は、どっちもだ」
「透夜さんも、欲張りな男なんですね」
 そう言いながらも顔が緩んでいる美澄を見て、透夜はくすりと微笑を浮べる。
「おまえと似合いだろ」
 そのとき、凛音があーと声をあげる。
 まるで同意をしたみたいだったので、二人は笑ったのだった。
「初めて出逢った日から一年になりますね。三人でクリスマスツリー飾りましょう」
 ジングルベルの鈴の音が聞こえてくる。
 辛い胸の痛みも、失ってきた過去にも、もう怯えたり振り返ったりしなくていい。
 愛しい妻と、我が子と、本当の幸せがここからはじまる――。







■節タイトル
8 幸福を呼ぶウエディングベル
■本文
 それから一年後――。
 凛音が一歳の誕生日を迎えた日、美澄と透夜はあらためて結婚式を挙げることになった。
 子連れのウエディングは何かと大変なので、いつものように周りの協力者たちが主演を盛り上げるべく、企画してくれたものだ。
「美澄ちゃん、とっても綺麗!」
< 110 / 117 >

この作品をシェア

pagetop