絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 ふわっと笑みを刻んだ表情も、透夜によく似ていた。ドキドキしながら、美澄は頷く。
「あ、ありがとうございます」
「こういうのは不慣れでね。頼りないかもしれないが、精一杯エスコートさせてもらおう」
「はい。よろしくお願いします。それから、八重さんのことも……どうかお幸せに」
「もちろんだ。君たちに負けないくらい幸せになるよ。今度は、忙しいという理由で嫁さんに逃げられないように……透夜を見習うべきだな」
 春樹はそう言い困ったように微笑んだ。
「美澄さん、息子を愛してくれてありがとう。どうか、これからも透夜のことをよろしく頼む」
「はい」
 美澄もまた柔らかく微笑み返した。
 チャペルの前の扉が開く。
 春樹が差し出してくれた腕に手を添え、美澄は深紅色のヴァージンロードの上を、一歩ずつ歩いた。
 左右にいる列席者たちに見守られる中、美澄はゆっくりと歩みを進めながら前を向く。
 ヴェール越しに透夜の姿が映った。今日の彼は白衣……ではなく、純白のタキシードに身を包んでいる。また一段と格好がいい。その見慣れない姿に胸がときめいて、早く彼の腕に捕まりたい気持ちになってしまった。
 逸る気持ちを抑えながら、美澄は春樹の腕から離れ、透夜の元へと寄り添う。
 祭壇の前に二人揃って並び、高鳴る胸のまま、讃美歌を唄い、共に誓いの言葉を結んだ。
 リングボーイとフラワーガールは、柊と凛音が拙いながらも一生懸命に務めてくれ、和やかな空気の中、ふたりはあらためて夫婦の証を交換する。
 そして、永遠の愛を誓うキスを――。
 美澄はドキドキしながら目を瞑り、透夜の唇が触れるまでの間、これまでのことを振り返っていた。愛しい日々が走馬燈のように駆け巡っていく。どれも、かけがえのない思い出だ。そして、これからも奇跡のような日々を大切に紡いでいく。
 目を開けて、美澄は透夜と微笑み合う。
 相思相愛という名の奇跡、愛する人と結ばれることの尊さを改めてかみしめていた。
「おめでとう!」
「ふたりとも、末永くお幸せに!」
 列席者からの祝福の花を浴びながら、美澄は透夜の腕に捕まり、幸せのウエディングベルをおもいきり鳴らすのだった。
< 113 / 117 >

この作品をシェア

pagetop