絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
美澄は目を丸くして、自分よりも背の高い彼を見つめ返す。今にも吐息がかかるような、キスできる距離にふたりはいる。言い合いに夢中になっていてまったくの無防備だったことを反省する暇もなかった。
「むやみやたらに男を煽ると、痛い目に遭うってこと学習しておけ」
「……っ」
透夜は壁に手をついたまま美澄を見下ろした。エレベーターはその間にも上昇していく。いつの間にかボタンは押されていたらしい。
「おまえが迫られたいっていうなら、ご要望に応えても構わないが?」
いきなりおまえ呼ばわりされ、冷たい視線を辿れば、獰猛な熱を孕んだ瞳を感じて、美澄はどきりとした。
これが彼の本性。目の前の男は、レストランで気取っていた紳士でもなければ、人命を救う医者でもない。ただの白衣の皮を被った獣だ。
「……っ最低」
「俺に何かされたら訴えればいい。あの日手術が終わったときみたいに必死な顔で、な」
透夜が挑発的にそう言い、美澄から離れる。
「今の、完全に脅しじゃないですか。信じられない。私、帰――」
「残念だが、もう着いた」
透夜は逃げても無駄と言いたげな意地悪な顔をして待っている。階下のボタンを押す気はないし、通しても離さないという覚悟が見える。店を出て彼に主導権を握られてから、もうとっくに彼のテリトリーに入ってしまっているのだ。
ここは絶対王政の魔王の城――。美澄は思わずぶるりと身震いをした。
(なんで本当についてきちゃったの、私。でも、今ここで帰るのは本当に逃げるみたいで悔しい)
謎の負けず嫌い魂がこみ上げてきて、美澄はつんと顔をそむけ、なんでもない素振りでエレベーターから出た。
「で? どこですか? 忌まわしい魔王様の居城は」
行ってやろうじゃないの。何かあれば、彼の勤める東雲総合病院に通報してやる!
美澄はあたりを見渡す。
「魔王ってな……。まあいい。こっちだ」
透夜は顎をしゃくった。
七階の一番奥が、透夜の住んでいる部屋のようだ。彼はカードをかざしてロックを解除するとドアを開き、美澄の方を振り向いた。
透夜の言いたいことを察した美澄はスマホの緊急通報画面を突き出した。
「ここまで来たら逃げませんよ。でも、何かあったら緊急アラーム鳴らしますからね」
透夜はしらけた顔をしている。彼の方はとっくに意地悪モードなど解除していたらしい。
「むやみやたらに男を煽ると、痛い目に遭うってこと学習しておけ」
「……っ」
透夜は壁に手をついたまま美澄を見下ろした。エレベーターはその間にも上昇していく。いつの間にかボタンは押されていたらしい。
「おまえが迫られたいっていうなら、ご要望に応えても構わないが?」
いきなりおまえ呼ばわりされ、冷たい視線を辿れば、獰猛な熱を孕んだ瞳を感じて、美澄はどきりとした。
これが彼の本性。目の前の男は、レストランで気取っていた紳士でもなければ、人命を救う医者でもない。ただの白衣の皮を被った獣だ。
「……っ最低」
「俺に何かされたら訴えればいい。あの日手術が終わったときみたいに必死な顔で、な」
透夜が挑発的にそう言い、美澄から離れる。
「今の、完全に脅しじゃないですか。信じられない。私、帰――」
「残念だが、もう着いた」
透夜は逃げても無駄と言いたげな意地悪な顔をして待っている。階下のボタンを押す気はないし、通しても離さないという覚悟が見える。店を出て彼に主導権を握られてから、もうとっくに彼のテリトリーに入ってしまっているのだ。
ここは絶対王政の魔王の城――。美澄は思わずぶるりと身震いをした。
(なんで本当についてきちゃったの、私。でも、今ここで帰るのは本当に逃げるみたいで悔しい)
謎の負けず嫌い魂がこみ上げてきて、美澄はつんと顔をそむけ、なんでもない素振りでエレベーターから出た。
「で? どこですか? 忌まわしい魔王様の居城は」
行ってやろうじゃないの。何かあれば、彼の勤める東雲総合病院に通報してやる!
美澄はあたりを見渡す。
「魔王ってな……。まあいい。こっちだ」
透夜は顎をしゃくった。
七階の一番奥が、透夜の住んでいる部屋のようだ。彼はカードをかざしてロックを解除するとドアを開き、美澄の方を振り向いた。
透夜の言いたいことを察した美澄はスマホの緊急通報画面を突き出した。
「ここまで来たら逃げませんよ。でも、何かあったら緊急アラーム鳴らしますからね」
透夜はしらけた顔をしている。彼の方はとっくに意地悪モードなど解除していたらしい。