絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 にっこりと微笑みかけると、柊はぱあっと笑顔を輝かせた。
「うん! しゅみ、あしょぶの!」
「うんうん、あそぼうね」
 男の子が背負っていたリュックには、柊という文字が書かれてあった。
 振り仰ぐと、透夜はホッとしたような顔をしていた。
「色々その中に必要なものは入ってるらしい」
「わかりました。柊くんに開けてもらいましょう」
 美澄は柊の目の前に座り、おいでと両手をやさしく引く。
「リュックの中にママが色々用意してくれていたんだって。一緒に開けてみようっか?」
「うん!」
 小さなふっくらした手がリュックを誇らしげに開く。
 覗いて見れば、手のひらサイズの絵本、着替えや消耗品など一式が入っている。それからお気に入りらしいお絵描きセットやミニチュアの車や列車などの玩具もいくつか。
 それらを大切に取り出してテーブルに並べ、美澄はご機嫌になった柊と遊びはじめた。
「ブーブーかっこいいね。しゅうくんはどれが好き?」
 消防車や救急車やパトカーを手にもって並べる柊に問いかけると、救急車のマークのところを指さした。
「こりぇ! みちゃの。これー!」
「さっき病院にいたからかな?」
「おえたち、しゅる」
 次はお絵描きをしたいらしい。子どもの興味は次から次へとうつる。かと思えば、一点に集中して没頭することも。
 柊は赤や青などのクレヨンで画用紙に書きなぐる。ちゃっかりと美澄の膝を椅子代わりに座っていた。
 ふふっと美澄は表情を綻ばせた。
「人見知りする子かなと思ったけど、そうでもなかったですね」
 透夜はソファに身を預け、柊と美澄の様子を眺めている。そんな彼の視線を感じた美澄は、柊を気にしつつ振り返った。
「それはおまえだからだ。人見知りするなんてものじゃなかったぞ。怪獣のように暴れていた。小児科病棟でもなかなかみない暴れっぷりだった」
 透夜には悪いが、その様子をちょっとだけ見てみたい気がした。だとしたら彼は相当困っていたことだろう。ぷぷっと美澄は噴き出す。
「さっきみたいに隠れちゃう感じでもないんですか」
「ああ。だというのに、不思議なもんだな。看護師にもなかなか懐かなかったらしいのに、おまえにはそういう何かがあるのか」
 感心したように透夜が言うので、美澄はちょっとだけ誇らしくなる。
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