絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「小さな子には好かれやすいですかね。保育士あるあるですけど、まあ、それだけが取柄ですよ。その仕事も今はなくなっちゃったけど」
ついこの間までたくさんの園児に囲まれていたことが、とても遠く懐かく感じるくらいだ。
「今は、休職中か」
「失業中ですね。保育園が潰れちゃったので。ですから、いいですよ。一日くらいなら、柊くんのお世話をするの」
「助かる」
魔王もようやくおとなしくなってくれたので、美澄は仕方なく頷いた。
「明日、何時にくればいいですか」
「このまま泊まっていけ。いちいち戻るのも面倒だろ。着替えや必要なものがあったらこっちですべて用意する」
「えっ……待ってください。泊まり?」
美澄は思わず眉間に皺をよせ、透夜をじっと見た。
「自意識過剰か? 何もしない。柊がいるんだ。何かいやらしいことができる状況でもないだろ」
「そ、そうは言っても、前科がありますからね」
美澄は警戒の目を透夜に向ける。
エレベーターで壁ドンされたことを言及したいのだ。
すると彼はため息をついて、
「俺は医者だ。人を救えないことはあっても、犯罪者になる気はない」
そうきっぱり言い切った。
意外に真面目に回答をもらってしまい、美澄は言葉を失った。
(この人って、なんか……)
硬く心を閉ざしたような、憂いを帯びた彼の表情に、美澄は目を奪われていた。
救えない命があること、その凍てつくような重みを、彼は誰よりも知っていると、体現しているようだった。
(何、急に……ずるい。そんなふうに言われたら、軽口を叩けないし、言い返せない)
美澄がしゅんとしていると、透夜が懐かしむように目を細める。
「あのとき、大きな怪我がなくてよかったな」
ふっとやさしい微笑みが一瞬見えて、美澄は目を大きくする。息が止まりそうになる。
(この人、そんな顔もできるんだ……)
つい見入っていたら、透夜は決まり悪かったのか、ふいっと視線を逸らした。
「勘違いするな。おまえじゃない。あのときの子どもが、だ」
偉そうだし、素直じゃないし、口が悪いのは変わらない。けれど――。
「……わかってます。本当によかったですよ。傷も残らなかったようですし。私も、無茶はしないように気をつけます」
「ああ。そうしてくれ」
やさしく表情が緩んだ。その一瞬が、美澄の過去の傷を癒していくように染み入る。
ついこの間までたくさんの園児に囲まれていたことが、とても遠く懐かく感じるくらいだ。
「今は、休職中か」
「失業中ですね。保育園が潰れちゃったので。ですから、いいですよ。一日くらいなら、柊くんのお世話をするの」
「助かる」
魔王もようやくおとなしくなってくれたので、美澄は仕方なく頷いた。
「明日、何時にくればいいですか」
「このまま泊まっていけ。いちいち戻るのも面倒だろ。着替えや必要なものがあったらこっちですべて用意する」
「えっ……待ってください。泊まり?」
美澄は思わず眉間に皺をよせ、透夜をじっと見た。
「自意識過剰か? 何もしない。柊がいるんだ。何かいやらしいことができる状況でもないだろ」
「そ、そうは言っても、前科がありますからね」
美澄は警戒の目を透夜に向ける。
エレベーターで壁ドンされたことを言及したいのだ。
すると彼はため息をついて、
「俺は医者だ。人を救えないことはあっても、犯罪者になる気はない」
そうきっぱり言い切った。
意外に真面目に回答をもらってしまい、美澄は言葉を失った。
(この人って、なんか……)
硬く心を閉ざしたような、憂いを帯びた彼の表情に、美澄は目を奪われていた。
救えない命があること、その凍てつくような重みを、彼は誰よりも知っていると、体現しているようだった。
(何、急に……ずるい。そんなふうに言われたら、軽口を叩けないし、言い返せない)
美澄がしゅんとしていると、透夜が懐かしむように目を細める。
「あのとき、大きな怪我がなくてよかったな」
ふっとやさしい微笑みが一瞬見えて、美澄は目を大きくする。息が止まりそうになる。
(この人、そんな顔もできるんだ……)
つい見入っていたら、透夜は決まり悪かったのか、ふいっと視線を逸らした。
「勘違いするな。おまえじゃない。あのときの子どもが、だ」
偉そうだし、素直じゃないし、口が悪いのは変わらない。けれど――。
「……わかってます。本当によかったですよ。傷も残らなかったようですし。私も、無茶はしないように気をつけます」
「ああ。そうしてくれ」
やさしく表情が緩んだ。その一瞬が、美澄の過去の傷を癒していくように染み入る。