絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
薫子の腕の間から覗かせた柊が、にこっと笑顔を咲かせ、美澄に手を振っている。
「ばっばい」
「しゅうくん、またね」
美澄もぶんぶんと手を振った。
「はぁ」
と、透夜がため息をつく。すっかり脱力しているようだ。
「なんだか……ものすごい嵐のようでしたね」
「まったくだ」
お互いに目が合って、それから押し黙る。
さっき薫子が言っていた『結婚式』という発言が脳裏をよぎって、美澄は頭を振った。
(KAORUさん、ごめんなさい。それは叶えられない願いです。どうかお元気で)
「俺たちも帰ろうか」
「はい」
公園からの帰り道――。
短い時間だったけれど、これでお別れだ。そう思うと、名残惜しいような気持ちになるのはなぜだろう。人には情というものが常に備わっていることを思い知らされる。
お見合い相手があの外科医で、彼の甥っ子の世話を頼まれ、一日一緒に過ごした……変わった出会いだったし驚いたけれど、ただそれだけのこと。
透夜の意外な一面を知れたこと、彼の本心に気付けたことは、美澄にとって一番の収穫だったかもしれない。
(それだけで充分……実りがあったって思うべきよね)
なんとなく漂う寂しさを払拭するべく、美澄はそんなふうに自分に言い聞かせる。
そして、マンションの前にたどり着き、透夜に別れを告げようとしたときだった。
「真下美澄」
急に硬い声に呼び止められ、美澄は身構えた。
「は、はい」
透夜は真剣な表情をしていた。その顔は何か頼みごとをするときと似ていたので、美澄は咄嗟に口を挟んだ。
「あ、だめですよ。お世話係は今日一日だけっていう約束ですからね? お給料だったら要りません。色々お金出してもらってますし。柊くんと遊ぶのは楽しかったですから。あと、お借りしたものはちゃんとクリーニングして後日お返ししますので……」
「いや、そういう話じゃない」
「じゃあ、なんです?」
美澄は透夜の言葉を待った。
もしかして感謝の言葉をとうとうくれるつもりだろうか。そしたら、どんな受け答えをしようか。彼には色々散々振り回されたわけだし、ちょっと上から目線にでも答えてみようか。
そんなふうに企んでいたのだが――。
「俺と、結婚してくれないか」
「――そう、えっ……はい? 今、なんて……」
美澄はすぐには情報が整理できなかった。
「ばっばい」
「しゅうくん、またね」
美澄もぶんぶんと手を振った。
「はぁ」
と、透夜がため息をつく。すっかり脱力しているようだ。
「なんだか……ものすごい嵐のようでしたね」
「まったくだ」
お互いに目が合って、それから押し黙る。
さっき薫子が言っていた『結婚式』という発言が脳裏をよぎって、美澄は頭を振った。
(KAORUさん、ごめんなさい。それは叶えられない願いです。どうかお元気で)
「俺たちも帰ろうか」
「はい」
公園からの帰り道――。
短い時間だったけれど、これでお別れだ。そう思うと、名残惜しいような気持ちになるのはなぜだろう。人には情というものが常に備わっていることを思い知らされる。
お見合い相手があの外科医で、彼の甥っ子の世話を頼まれ、一日一緒に過ごした……変わった出会いだったし驚いたけれど、ただそれだけのこと。
透夜の意外な一面を知れたこと、彼の本心に気付けたことは、美澄にとって一番の収穫だったかもしれない。
(それだけで充分……実りがあったって思うべきよね)
なんとなく漂う寂しさを払拭するべく、美澄はそんなふうに自分に言い聞かせる。
そして、マンションの前にたどり着き、透夜に別れを告げようとしたときだった。
「真下美澄」
急に硬い声に呼び止められ、美澄は身構えた。
「は、はい」
透夜は真剣な表情をしていた。その顔は何か頼みごとをするときと似ていたので、美澄は咄嗟に口を挟んだ。
「あ、だめですよ。お世話係は今日一日だけっていう約束ですからね? お給料だったら要りません。色々お金出してもらってますし。柊くんと遊ぶのは楽しかったですから。あと、お借りしたものはちゃんとクリーニングして後日お返ししますので……」
「いや、そういう話じゃない」
「じゃあ、なんです?」
美澄は透夜の言葉を待った。
もしかして感謝の言葉をとうとうくれるつもりだろうか。そしたら、どんな受け答えをしようか。彼には色々散々振り回されたわけだし、ちょっと上から目線にでも答えてみようか。
そんなふうに企んでいたのだが――。
「俺と、結婚してくれないか」
「――そう、えっ……はい? 今、なんて……」
美澄はすぐには情報が整理できなかった。