絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「それか、この間みたいに、来客用のお布団を敷いては? 私がそっちでもいいですし」
「布団はあくまで臨時の来客用だ。子どもならいいだろうが、足がはみ出るし寝心地がよくない。それでもよければ、おまえは布団を敷いて寝ればいい。俺はこのままでいい」
 美澄は透夜の前にまわって、毛布を引っ張った。
「そこにいられると、気になるんですったら」
 はぁ、とため息をついて、透夜は毛布から顔を出し、だるそうに起き上がった。
「仕事や生活スタイルに干渉しすぎない。自由に過ごす方が楽だろ」
 透夜のいうことはもっともだった。けれど、美澄にも言い分はある。
「だって、元々はベッドで寝ていたんですよね。それに、私一人が寝るには広すぎて落ち着かないんですよ。ルールはもちろん大事ですけれど、状況に応じて変化することもあるわけじゃないですか。人との関係も暮らしも」
「ふうん。その言葉を後悔するなよ」
 透夜はそう言い残すと、さっさとリビングから出ていく。
「え?」
 ぽつんと取り残された美澄の方へ振り返り、透夜が来いよ、と手招きをする。
 言われるがまま美澄は彼についていくのだが。
「つまりホームシックなんだな? 寂しいんだろ。仕方ないから一緒に寝てやる」
「えっ。そ、そういうわけじゃ」
「じゃあ、どういうわけなんだ」
「だ、だから」
 言い合っているのが煩わしいと言いたげに、透夜は美澄の手を引っ張った。
「え、あ、ちょっと」
 寝室の扉は締められ、密室にふたりきりという状況。
 さっきまでむやみに広いと思ったベッドが急に狭く感じてしまう。
「美澄」
 低く擦れるような声で名前を呼ばれてどきっとする。
 透夜が近づいてきて、美澄は後ずさった。
「待って、私、やっぱり……!」
「バカ。何、へんな想像しているんだ。さっさと寝るぞ」
 軽く頭をぽすっと押さえつけられ、美澄は肩を竦める。
 透夜はベッドにもぐりこみ目を瞑ってしまう。
 美澄はおずおずと彼の後に続き、隅の方に固まっている。
「ね、眠れない……です」
「一人で落ち着かないと言ってたくせに、めんどくさいやつだな」
 透夜はこちらを向いてじっと見つめてきた。まるで獲物を捉えんとする眼差しにどきりとした。
「や、やっぱり私がソファに――」
 美澄が起き上がろうとすると、透夜が腕を引っ張って、ぎゅうっと抱きしめてきた。
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