絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「東雲なら、緊急オペが終わったあと、カウンセリング室に入ってたけど……もうまもなく戻ってくると思うよ。ちょうどお昼だしね」
「服部先生も、お見合いしたらどうですか? 相棒が結婚して寂しいんじゃないんです?」
 看護師が冷やかすように言うと、
「うーん、僕はそういうの苦手でね」
 と、服部が顔の前で手を振る。
「お見合いなんてしなくても、先生はモテモテだもの」
「それもそうだったわ!」
 お昼の時間だからか、看護師たちの和やかな空気が広がっている。美澄も表情を緩ませた。
「あいつが結婚する気になったんだから、よほど、魅力的な女性ということですね。やっぱり胃袋を掴むのは強いなぁ」
 服部の視線は何かを勘繰るような色を孕んでいて、場に溶け込んで和やかになったのも束の間、美澄は妙な居心地の悪さを感じてしまう。
(なんだろう? 見透かされてしまいそうというか……)
 このときは気のせいと、そう片付けるだけに留めていた。
「えっと、お仕事中お邪魔してすみませんでした。それじゃあ、私はこれで」
 そそくさと立ち去ろうとしたそのときだった。
「あ、奥様、待ってください。東雲先生、戻ってきましたよ」
 奥様――という言葉にくすぐったさを感じる間もなく、美澄は弾かれたように振り返り、透夜を発見する。
 間違いなく、あの日の彼がいる。
 そう、白衣の彼を見るのは、これが二度目だ。
 けれど、初対面のときとは全然違う。彼を待つ間、ドキドキしてきた。
(これはあれだ。となりのクラスの彼氏をクラスメイトに呼び出してもらう展開みたいな……!)
 青春時代を思い出し、妄想を膨らませている美澄をよそに、透夜は険しい表情を浮べている。
 当たり前だが、今の彼はひとりの医師であり、美澄を翻弄する存在ではない。
 彼は美澄を見つけると意表を突かれたような顔をし、怪訝な表情でこちらへ近づいてくる。
「どうした。なんでおまえがここにいるんだ。どこか怪我か? 具合でも――」
 透夜は美澄の様子を気にかける。どうやら心配させてしまったらしい。
「あ、いえ。違うの。お弁当、忘れていってたから、届けにきたんです」
「なんだ。そんなことで、わざわざ来たのか」
 透夜はホッとしたように胸を撫で下ろすと、迷惑そうに事務的に言った。言葉通り美澄には用事がないときに来てほしくなかったのかもしれない。
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