絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
少しだけカチンときたし、ショックを受けつつも、不仲だと思われるのは困るだろうと、美澄はやんわりと言い返す。
「あなたったら、照れなくたって」
透夜は目を丸くする。そして居心地悪そうにしていた。
よし! それだけでも美澄の反逆は成功だ。
「は? 俺は別に――」
「じゃあ、そういうことで。私はお邪魔にならないうちに帰りますね。お仕事、がんばってください」
言葉をさえぎって踵を返そうとしたとき、「待って」と呼び止められる。その声の主は透夜ではなく、服部だった。
「東雲、せっかく奥さんがわざわざ届けにきたのに追い返すのは野暮ってもんだ。このあとのカンファレンスまでなら少し時間あるだろ」
「そうだが、まだやることはある」
「昼の時間に戻ってきたんだろう。照れなくても。せっかくの新婚なんだから。緊急が入れば、俺が代わりに行くからさ」
どうやら同期の服部とは気が置けない仲らしい。彼のいうことはきくようだ。服部に促されると、渋々といったふうに透夜はこちらを振り向く。
目が合ってこそばゆい気持ちになった。
(奥様とか奥さんとか、初めて呼ばれたもんね)
こころなしかクールな彼の顔も少しだけ温度が上がったように見える。
まわりの視線が一斉に集まるのを感じた透夜はとうとういたたまれなくなったらしい、お弁当を乱暴にさっと受け取ると、いきなり美澄の腕をつかんだ。
「ちょっとこっち来い」
病院という場所である以上なんとか声を抑えながらも我慢できなくなった看護師たちの感嘆のため息を耳で拾いつつ、美澄は小走りで透夜についていった。
連れて行かれたのは裏庭だった。患者の姿はなく、医師や看護師がぽつぽつと休憩しているのが見える。
立派な桜の木がそびえたち、淡い色の花びらが一面を囲う。陽当りのいい場所は半分ほどもう翠の葉が見えていた。
小さな柊を連れて三人でピクニックしたときはまだ満開だったけれど、これから初夏に向けて青々とした木々に変わっていくことだろう。
午後のそよ風はだいぶ暖かく、心地がよい。けれど、二人の間にはぎこちない冷たい空気が漂う。
透夜は白衣のポケットに手を突っ込み、無表情のまま何かを考え込んでいる様子だった。
「なんか怒ってます?」
美澄は透夜の様子を窺い、そっと問いかけた。彼は一拍置いてから口を開く。
「あなたったら、照れなくたって」
透夜は目を丸くする。そして居心地悪そうにしていた。
よし! それだけでも美澄の反逆は成功だ。
「は? 俺は別に――」
「じゃあ、そういうことで。私はお邪魔にならないうちに帰りますね。お仕事、がんばってください」
言葉をさえぎって踵を返そうとしたとき、「待って」と呼び止められる。その声の主は透夜ではなく、服部だった。
「東雲、せっかく奥さんがわざわざ届けにきたのに追い返すのは野暮ってもんだ。このあとのカンファレンスまでなら少し時間あるだろ」
「そうだが、まだやることはある」
「昼の時間に戻ってきたんだろう。照れなくても。せっかくの新婚なんだから。緊急が入れば、俺が代わりに行くからさ」
どうやら同期の服部とは気が置けない仲らしい。彼のいうことはきくようだ。服部に促されると、渋々といったふうに透夜はこちらを振り向く。
目が合ってこそばゆい気持ちになった。
(奥様とか奥さんとか、初めて呼ばれたもんね)
こころなしかクールな彼の顔も少しだけ温度が上がったように見える。
まわりの視線が一斉に集まるのを感じた透夜はとうとういたたまれなくなったらしい、お弁当を乱暴にさっと受け取ると、いきなり美澄の腕をつかんだ。
「ちょっとこっち来い」
病院という場所である以上なんとか声を抑えながらも我慢できなくなった看護師たちの感嘆のため息を耳で拾いつつ、美澄は小走りで透夜についていった。
連れて行かれたのは裏庭だった。患者の姿はなく、医師や看護師がぽつぽつと休憩しているのが見える。
立派な桜の木がそびえたち、淡い色の花びらが一面を囲う。陽当りのいい場所は半分ほどもう翠の葉が見えていた。
小さな柊を連れて三人でピクニックしたときはまだ満開だったけれど、これから初夏に向けて青々とした木々に変わっていくことだろう。
午後のそよ風はだいぶ暖かく、心地がよい。けれど、二人の間にはぎこちない冷たい空気が漂う。
透夜は白衣のポケットに手を突っ込み、無表情のまま何かを考え込んでいる様子だった。
「なんか怒ってます?」
美澄は透夜の様子を窺い、そっと問いかけた。彼は一拍置いてから口を開く。