絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「愛妻弁当を届けた奥さんに向かってバカって、ひどくないですか。しかも、ますますとは?」
「対価が欲しいなら、帰ったらひとつくらいは奥さん孝行してやる」
「えーひとつだけですか?」
わざと上目遣いをしてみる。
しかし透夜にぶりっこは効力がないことくらい美澄にはわかっていた。
寒い空気が漂う。予想していた通り、透夜はしらんぷりし、かぼちゃの煮物を黙々と味わったあと、「……バカだな」と一蹴する。
「今のは冗談ですよ。似合わないことをしました」
美澄は肩を竦めた。
「おまえは……けっこうなお調子者だ。自覚があるだけマシだが」
「自覚のない、あなたにだけは言われたくないですよ」
言い合っている傍から、透夜は残りのおかずもあっという間に平らげる。最後にカットしたフルーツを放り込むように口にいれた。
ゆっくりする時間はあまりないのだろう。だからこそ、やっぱり届けられてよかったと、美澄は思った。
「……そろそろ戻る」
「はい。頑張ってくださいね。あ、お弁当箱、持って帰ります」
美澄は両手を差し出し、彼からお弁当箱一式を受け取った。
「美澄」
「はい?」
「……ありがとうな。うまかった」
透夜の口から聞けたその言葉で、美澄の心は軽くなる。自然と彼に微笑んでいた。
「どういたしまして」
照れくさそうにしている彼のことが、なんだかちょっとだけ愛しく感じられて、来てよかったと美澄は思った。
「じゃあ、おうちで待ってますから」
美澄は手を振り、その場をあとにした。
待ってます――か、と透夜が呟いた声は彼女の耳には届かなかった。
■節タイトル
4 夫婦が恋に落ちる日
■本文
透夜と一緒に暮らしはじめて一週間が過ぎる頃、透夜が休みの日に二人はデートをすることになった。お試し期間中の約束の一つだ。
デートの前日は帰宅が遅い時間だったので、当日はゆっくり午前十時くらいに起きたあと、早めのブランチを済ませた。それから美澄の行きたいところに連れていくと透夜が言ってくれたので、スマホで検索しつつ、リクエストしたのだが――。
「動物園と水族館……本気で両方行くのか?」
美澄のスマホの画面を眺めながら、透夜はやや不服そうに言った。た
「対価が欲しいなら、帰ったらひとつくらいは奥さん孝行してやる」
「えーひとつだけですか?」
わざと上目遣いをしてみる。
しかし透夜にぶりっこは効力がないことくらい美澄にはわかっていた。
寒い空気が漂う。予想していた通り、透夜はしらんぷりし、かぼちゃの煮物を黙々と味わったあと、「……バカだな」と一蹴する。
「今のは冗談ですよ。似合わないことをしました」
美澄は肩を竦めた。
「おまえは……けっこうなお調子者だ。自覚があるだけマシだが」
「自覚のない、あなたにだけは言われたくないですよ」
言い合っている傍から、透夜は残りのおかずもあっという間に平らげる。最後にカットしたフルーツを放り込むように口にいれた。
ゆっくりする時間はあまりないのだろう。だからこそ、やっぱり届けられてよかったと、美澄は思った。
「……そろそろ戻る」
「はい。頑張ってくださいね。あ、お弁当箱、持って帰ります」
美澄は両手を差し出し、彼からお弁当箱一式を受け取った。
「美澄」
「はい?」
「……ありがとうな。うまかった」
透夜の口から聞けたその言葉で、美澄の心は軽くなる。自然と彼に微笑んでいた。
「どういたしまして」
照れくさそうにしている彼のことが、なんだかちょっとだけ愛しく感じられて、来てよかったと美澄は思った。
「じゃあ、おうちで待ってますから」
美澄は手を振り、その場をあとにした。
待ってます――か、と透夜が呟いた声は彼女の耳には届かなかった。
■節タイトル
4 夫婦が恋に落ちる日
■本文
透夜と一緒に暮らしはじめて一週間が過ぎる頃、透夜が休みの日に二人はデートをすることになった。お試し期間中の約束の一つだ。
デートの前日は帰宅が遅い時間だったので、当日はゆっくり午前十時くらいに起きたあと、早めのブランチを済ませた。それから美澄の行きたいところに連れていくと透夜が言ってくれたので、スマホで検索しつつ、リクエストしたのだが――。
「動物園と水族館……本気で両方行くのか?」
美澄のスマホの画面を眺めながら、透夜はやや不服そうに言った。た