絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「あたりまえだ。ワインボトルが足に落ちるのも案外痛いんだぞ。もし割れたら、おまえ怪我をするだろう」
 真顔でそう言う透夜に、美澄はちょっとだけ目をぱちくりとさせた。
「思ったんですけど、案外、過保護タイプなんですね」
 感想のようなセリフになっていたかもしれない。
 透夜は我に返ったらしく、早く部屋に行くぞ、と美澄を急かした。
 あまり追及することではなかっただろうか。いつもなら職業柄がどうとか反論するのに。
「さて、お腹が空いたので、ぱぱっとオムシチュー作っちゃいますね」
 美澄はキッチンに立ち、手を洗ったあと、買ってきた材料を並べた。
「透夜さん、先にお風呂行ってきてもいいですよ。明日、早いですよね」
 ワインを冷やしてくれていた透夜が振り返り、とんでもないことを言い出す。
「あとでいいよ。一緒に入ればいい」
「な、何言ってるんですか」
「別にここでもいいか。デートの続きしよう」
 透夜は美澄の後ろに立ち、彼女の腰にゆるく腕を回した。
「ちょっ……透夜さん、ふざけないでください」
「美澄」
 低い声がぞくぞくと身体の芯をくすぐる。
「ひゃっ」
 耳に感じる吐息や、ふんわりと香るトワレに、美澄は手に持ちかけていた玉ねぎを思わず落としてしまう。
 さらに、ぎゅっと抱きしめられ、身動きが取れなくなってしまった。
「だ、だめ……だめ……まだ、手は出さないって約束!」
 じたばたしていると、強引に透夜の方を振り向かせられてしまう。彼が熱っぽく見つめていることに気付き、美澄は困惑したまま見つめ返す。
「急にどうしたんですか」
「おまえがかわいいから、構いたくなっただけ」
 超ストレートに口説かれ、美澄はただ真っ赤になるしかない。
 いきなりのこのパターンは予測していなかった。
「ルール違反はダメですよ」
 どうしようか。まったく、逃げ場がなくなってしまった。
「わかってる。身体はそのうちでいい……キスくらいは許せ」
 透夜は囁くように言って、美澄の顎をついっと指先であげると、軽く唇をくっつけた。ドキドキしながら美澄は、どう反論していいかわからなくなり身を硬くする。
 水族館でしたキスのことが蘇る。そうだ、キスならもうとっくにしている。でも、キスを許したらその先が待っているんじゃないの? 私はこのまま流されていいの?
< 54 / 117 >

この作品をシェア

pagetop