絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「その性格、おまえのことが羨ましいよ」
 透夜は相変らずだけれど、彼の言葉には前ほど棘のようなものはなく、やわらかい雰囲気を出すようになった。会話をしていてこちらも楽しい。
 それから、作ったご飯をすべて平らげてくれるところも、言葉は乱暴だけれど意外にやさしく気遣ってくれるところもいいなと思う。
 紳士とは程遠い性格なのに、長い髪がなかなか乾かなくて苦戦していると、ドライヤーを手伝ってくれたりもした。あのおみやげのくらげのブックマーカ―が挟まっているのを見かけて、ちゃんと思い出を大事にしてくれるところも嬉しかった。
 そういう小さな積み重ねの好ましい発見は、美澄の心情だけでなく二人の関係を軟化させていく。
(私、この人のこと……嫌いじゃないかもしれない。ううん、むしろ――好きかもしれない)
 刻々と心境の変化を感じつつ、胸が熱くなっていくのを知らないふりして、美澄は久しぶりに会話を楽しんでいた。
 大体は病院内のことや薫子と柊の話題が中心だ。病院内のあるある話だとか、医師と看護師の恋愛事情だとか。無論、透夜はそういうことを自分から喋りたがらないので、美澄が話を聞きだすような形ではあったが。
 それから、柊がまた遊びにきたいと言っていたらしく、透夜が困惑している様子を見て、美澄は笑った。
 食事を楽しんだあと、片づけをしていると、透夜がキッチンにやってきた。
「あ、お酒、飲みますか? 明日はお休みでしょう?」
「ああ。おまえもそろそろ休めばいい」
「じゃあ、私も一緒に一杯」
 透夜がグラスを二つ出してくれ、冷えたシャンパンを注いだ。二人でキッチンに立ったまま、軽く乾杯をして口をつける。心地のいいのど越しを感じつつ、透夜を見つめた。
 いつ見ても彼は整った綺麗な顔をしている。有名人に見間違えられてもおかしくないだろう。医者としての彼は凛々しく精悍な顔つきをしていて、それは格好がいい。どちらの彼も嫌いじゃない。
 普段は、もっと気を緩めてくれてもいいのに。美澄はそんなことをぼんやりと思う。
 それはある意味、独占欲なのかもしれない。もっと甘えてほしいと願っているのは自分の方だ。そして、彼に甘えたいような気持ちになってくる。人肌が恋しいような、くっつきあいたいような。
(私、何考えてるの……なんか、へんな気持ちになってくる)
 恋愛脳ならぬ煩悩抹消!
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