絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 その言葉が信用できるか否かは別として、あからさまに警戒しすぎたかもしれないと、美澄は肩を竦めた。
「まあ、いいさ。こっち」
 服部が案内してくれたのはカジュアルフレンチレストランだった。
 事前に予約していたらしい。服部が案内係に声をかけると、すぐに薄明りの半個室となっている席に案内された。
 その席は、外からは二人の姿がはっきり見えるが、他の客からは見えないようになっている、いわゆるカップルシートという半個室だった。フレンチレストランというけれど、内装は和風に寄せていて、日本をリスペクトしている空気があった。
「今度、あいつと一緒に来るといいよ。花見の季節とか、最高だと思うんだ」
 服部はにこりと笑顔を見せる。
 たしかに、店内の雰囲気はとてもいい。淡い桜色を基調としたデザインの配色は、薄明りのライトになじんでいて、落ち着いた空間を作り上げている。
「なんだか縁側でお月見でもしているような気分ですね」
「そうそう。あんまり他の席から声も漏れてこない。気兼ねなく話ができるからね、おすすめなんだ」
 都会の夜空を見上げるには、周りにそびえたつビルに邪魔され、星はおろか月さえ見えにくいけれど、ひょっとしたら、外から見えるここの席こそ夜に浮かぶ湖面の月のように見えているかもしれない。完全に隔離された世界のようだ。
(たまには外でデートとかもありかな)
 ぼんやり透夜のことを思い浮かべる。
「まずは乾杯しようか」
 と、服部は手慣れたようにオーダーし、ふたりは軽めの白ワインをそれぞれいただく。
 それから料理が運ばれてくるのを待つ間、さっそく美澄は服部に尋ねた。
「それで、透夜さんの話っていうのは……?」
「僕が話をしたかったのはね、東雲のことというよりは、君たちふたりについて」
「え? 私たちふたりですか?」
 てっきり透夜のことだと思ったので、美澄は首を傾げる。
「そう。僕は疑問に思っているんだよ。どうして君たちは結婚したんだろうってね」
 服部は謎かけをするかのように言った。
「どういう意味ですか?」
 探るような視線を向けられ、美澄はぎくりとしてしまう。
「いや。随分急なことだっただろう? おかしいなって思ったんだ」
 まさか契約結婚について、服部は何か勘づいているのだろうか。てっきり、透夜の不眠の件だと思い込んでいたが、彼が聞きたかったのは別のことらしい。
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