絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
「知りたいです。ちゃんと聞きたい……透夜さんが、辛くないのなら」
「……わかった」と、透夜は美澄の頭をやさしく撫でた。
「まず、おまえは誤解しているようだが、その亡くなった彼女とは別に恋仲だったわけじゃない。しいていうなら、そうだな……妹のような存在だった」
と、透夜は美澄を見て、憂いを帯びた表情を浮かべる。
「少し、おまえに性格は近いかな。素直で元気で逞しくて。とにかく表情がくるくる動く、見ていて飽きない存在だった。俺には姉貴がいたが、下にはきょうだいがいなかったから、兄貴分として彼女を守ってやらなければという使命感のようなものがあったかもしれない。それも小さなころの話だ」
そう語る透夜の眼差しは、どこか遠い記憶に想いを馳せるようだった。
彼の穏やかな語り口調から、何にも代えがたい優しい思い出なのだろうというのが伝わってくる。
しかし美澄の胸にはちくりと棘のようなものが刺さる。やがて、じわじわと痛みが広がっていって、息ができなくなりそうになる。彼女への嫉妬と理性とを必死に天秤にかけていた。
「彼女が亡くなったのはいつ……病気ですか?」
「俺がまだ二十代で、研修医から医師になりたての頃だな。彼女は至って健康だった。好きな男と結婚して妊娠して、これから出産を控えているっていうときだった。ある冬の日……雨の降る日に、事故に遭ったんだ」
「事故……」
美澄の脳裏に、あの日のことがまた浮かんだ。彼が必死に助けてくれたことを。
「俺は、主治医と一緒に救急で対応にあたった。だが――結局、彼女も、お腹の子も、どっちも……助けてやることができなかった。医者っていうのは無力なもんだよ。もしも俺じゃなかったなら、そう何度も思った。あとにも先にもあれほど後悔したことはない」
苦悶の表情を浮べる透夜からは、まだ癒しきれていない傷が彼の中に残されていることを感じ取れる。
「……だから、私に重ねて見ていたんですか」
癒されたいと、透夜が言っていたことを美澄は思い出していた。彼は結婚に癒しを求めていた――。
「……わかった」と、透夜は美澄の頭をやさしく撫でた。
「まず、おまえは誤解しているようだが、その亡くなった彼女とは別に恋仲だったわけじゃない。しいていうなら、そうだな……妹のような存在だった」
と、透夜は美澄を見て、憂いを帯びた表情を浮かべる。
「少し、おまえに性格は近いかな。素直で元気で逞しくて。とにかく表情がくるくる動く、見ていて飽きない存在だった。俺には姉貴がいたが、下にはきょうだいがいなかったから、兄貴分として彼女を守ってやらなければという使命感のようなものがあったかもしれない。それも小さなころの話だ」
そう語る透夜の眼差しは、どこか遠い記憶に想いを馳せるようだった。
彼の穏やかな語り口調から、何にも代えがたい優しい思い出なのだろうというのが伝わってくる。
しかし美澄の胸にはちくりと棘のようなものが刺さる。やがて、じわじわと痛みが広がっていって、息ができなくなりそうになる。彼女への嫉妬と理性とを必死に天秤にかけていた。
「彼女が亡くなったのはいつ……病気ですか?」
「俺がまだ二十代で、研修医から医師になりたての頃だな。彼女は至って健康だった。好きな男と結婚して妊娠して、これから出産を控えているっていうときだった。ある冬の日……雨の降る日に、事故に遭ったんだ」
「事故……」
美澄の脳裏に、あの日のことがまた浮かんだ。彼が必死に助けてくれたことを。
「俺は、主治医と一緒に救急で対応にあたった。だが――結局、彼女も、お腹の子も、どっちも……助けてやることができなかった。医者っていうのは無力なもんだよ。もしも俺じゃなかったなら、そう何度も思った。あとにも先にもあれほど後悔したことはない」
苦悶の表情を浮べる透夜からは、まだ癒しきれていない傷が彼の中に残されていることを感じ取れる。
「……だから、私に重ねて見ていたんですか」
癒されたいと、透夜が言っていたことを美澄は思い出していた。彼は結婚に癒しを求めていた――。