絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 薫子と服部の二人はソファに並んで座った。なんだか不思議な取り合わせだ。
 透夜と服部は同期だという話だし、姉の薫子が知り合いでもおかしくはないだろうけれど。
 コーヒーを淹れながら、キッチンから二人の様子を眺めていると、
「あ、一応ついでに言っておくけど、服部はね、私の元カレなのよ」
「えっ、そうなんですか!?」
 衝撃の告白をさらっと出され、美澄は運ぼうとしていたコーヒーをこぼしそうになった。
「じゃあ、柊くんは……」
「それはまた別の人。その前っていうこと」
 随分雑な紹介だ。あまり深いことは聞かれたくないらしい。
「そ、そうなんですね」
「まあ、短い期間だったんだけどね。すぐに新しい人見つけちゃって、こちらは用済み」
 服部もまた一言添える。それに対し、薫子はしらけた顔をしている。
「よく言うわ。このとおり飄々としててむかつく男よ。だから、服部の言うことはいちいち気にしちゃだめ」
「一応、振られたのは僕の方なんだけど」
 不服そうな服部の肩をずいっと押しのけ、薫子はその場をとりなした。
「まあ、いいじゃない、その話は。今日は、美澄ちゃんと透夜の件で、ね」
 薫子が服部を肘で突く。
「どうぞ」
 と、美澄は二人の前にコーヒーを置く。服部は礼を言ってから、申し訳なさそうな顔をした。
「あいつ……当直でもないのに一週間、病院に寝泊りしてるから、これは雨降って地固まるどころか、崩落でも起こしちゃったかなと。そそのかした僕のせいだよね」
 レストランでのやりとりが、美澄の脳裏に蘇ってくる。それから、あのあとマンションに戻ってきたあとのことも。
「いえ。服部先生が教えてくださらなくても、いずれはぶつかった問題だと思いますし……」
 美澄はしゅんとして俯く。
 元々、透夜の不眠を心配していたというのに、彼を病院で寝泊りさせているなんて、ひどいことをしてしまったと思う。
 彼をますます追い詰めてはいないだろうかと、心配になってしまった。
「美澄ちゃん、そのことなんだけど、透夜の幼なじみの千代ちゃんは、本当に妹みたいに可愛がってた子でね」
「千代ちゃんっていうんだ」
 名前を知ってしまうと、ますます形として浮き上がってしまい、美澄の中に暗い影が広がっていく。
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