絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 ――ああ、どうしよう。本当に、この人のことが好き。美澄はまた、彼への想いを実感するほかになかった。
「私が断っても、きっとあなたはそれでも私をどうにかして、頷かせるつもりなんでしょう? あの日、契約結婚を迫ったときみたいに」
「もちろんだ。あの日以上に引き止めるつもりだ。もう、どうしようもなく惚れちまったんだからな。誰にもやらない。何があってもおまえを離さない」
 透夜の瞳に情熱の色が滲む。彼の真摯な想いに打たれて、美澄の指先は震え、やがて我慢していた涙がとうとう溢れてきてしまった。
「本当、勝手な人。どうして私、あなたと出逢っちゃったのかな」
 そうでも言わなければ、体裁を保っていられそうにない。
 もちろん、それは後悔の意味ではなく、それほど彼に深くはまってしまったことに対して、完敗した自分を慰めるためのものだ。
「美澄……」
 透夜の長い指先が、美澄の細い指に絡まる。
「でも、はじまってしまったんだもの。時間は前にしか進まない。もう後戻りなんてできないの。私、透夜さんのこと……好きになっちゃったんだから」
「おまえは、俺のことが嫌いだったはずなのにな」
 皮肉げに彼は微笑む。
「私は、あなたに巻き込まれたんだから、責任をとって幸せにしてくれなきゃ許さない」
 美澄が言うと、透夜はテーブル越しに彼女の唇を塞いだ。
「――必ず、幸せにする」
 その言葉があれば、この先ずっと幸せでいられると思った。
「……はい」
 頷いたら、涙の粒が頬を滑り落ちていった。それは止めどなく。何度も涙で視界が揺らぐ。
 けれど、しっかりと指輪が嵌められていく感覚がわかった。
 ここから、ふたりの恋の続きがはじまるのだ。
 契約に縛られた結婚じゃなく、これから先の未来を約束をするために。

     ***

 食事を楽しんだあと、ふたりはどちらともなく手を繋いで店を出た。
 気持ちが昂ぶっているせいなのか、そんなにお酒を飲んだつもりはないのに、ふわふわしている。
 左の薬指にしっかりと填められた指輪がくすぐったい。夜でもちゃんと星のようにキラキラ輝いている。まるで奇跡みたいに綺麗だ。それが、透夜の純粋な気持ちを現しているのだと想ったら、どうしようもなく愛おしくてたまらなかった。
 ぽつりと頬が濡れるのを感じ、美澄は空を見上げた。
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