絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 悩んでいる間に、再び吐き気を催し、美澄は浅く息を吐く。寒気のようなものが背をざわりと撫で上げ、額に汗が伝っていった。
 一向に来る気配のない美澄を心配したらしい透夜が戻ってきて、慌てて美澄の背中をさすった。
「どうした。気分が悪くなったのか」
「うん、ちょっとだけ。でも大丈夫。だいぶ落ち着いてきたから」
 美澄は緊張しつつ透夜を見つめる。きっと話を先伸ばしにしたところで、医者の目は侮れない。もし妊娠していたら、つわりはこれからも続くだろう。それなら、今、打ち明けた方がいいかもしれない。
「あ、あのね」
 心臓が口から飛び出しそうになり、何度かどうしようかと引っ込めようとするが、黙っていることは無理だった。
「うん?」
「私、妊娠したかもしれない」
 透夜は驚いた顔をしたものの、なるほどそういうことかと悟ったらしい。美澄の頬をやさしく撫でた。
「そっか。これから身体もっと大事にしないとな」
「透夜さん、子どもが得意じゃないですけど、大丈夫ですか」
「そんなこと気にしてたのか。あたりまえだろう。過去と今は違う。それに、おまえとの子なら嬉しいよ」
「よかった」
 美澄は透夜が喜んでくれたことが嬉しくて頬を緩ませる。まだ少し胃はむかむかするけれど、それが赤ちゃんからのサインだと思うと、さっそく愛おしさを感じてならなかった。
 念のため、急ぎ近くのドラッグストアで簡易検査薬を購入し、早速試してみたところ、やはり妊娠陽性だった。
「しかし。そうなると、旅行は中止か」
「残念だけど、そう、だよね。ごめんね。せっかくお休みとってくれたのに」
 美澄がしゅんとすると、透夜は彼女の髪をやさしく撫でた。
「いいさ。温泉に入らないにしても、旅先で何があるかわからないからな。まずは、病院ではっきりした方がいい」
「赤ちゃんがいたら、ダブルでお祝いしなくちゃね」
「ああ、そうだな」
 そういうわけで、ふたりは迎えにきたタクシーに行先の変更を告げ、急きょ東雲総合病院に向かうことにした。
 産婦人科を受診すると、妊娠六週目つまり妊娠二ヶ月からまもなく三ヶ月に入る時期ということがわかった。出産予定日は来年の一月頃になるらしい。
 産科医から診断画像と共に説明を受けた美澄と透夜は、顔を見合わせて微笑む。
(すごい……あんなふうに、もう形になって見えるんだ。私のお腹の中に……赤ちゃんがいるんだ)
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