絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 感動しつつ診察室から出ると、たくさんの妊婦さんたちの姿が見え、美澄はいずれ自分のお腹もだんだん大きくなっていくのだと、気が引き締まる想いになる。
 産婦人科外来から移動しようとしたとき、白衣を来た医師の往来を見た美澄は、ふと透夜のことが気にかかった。
「そういえば、透夜さん付き添いにきてよかったんですか。もし服部先生に見つかったら、冷やかされますよ」
「別に、隠れることじゃないだろう。今日はプライベートだ。それに、外科病棟は離れてるんだ。産科にはめったにこないから大丈夫――」
 と透夜が言いかけたが、どうやら大丈夫ではなかったらしい。その噂の相手、服部の姿が見えたのだ。
「なんであいつは、こういうときに妙にタイミングが合うんだ? すまないが、向こう行ったら教えてくれ」
 絡まれるのが面倒だと、透夜は背を向けて通りすぎるのを待った。
 ミッションを無事に達成したあと、美澄は透夜の方を振り向く。
「行ったみたいです。何か用事があったんでしょうか」
「病状に関連性があれば出向くこともあるが、あいつの場合は、気にいった看護師がいるところにはどこでも出没するからな」
「でも、服部先生は、透夜さんのこと心配してましたし、実はいい人ですよね」
「おまえもそうやってすぐ騙されないように。あいつは調子がいいんだ。そんなもんで、外科部長や教授にも可愛がられているよ。出世欲があって世渡り上手なんだ」
 透夜は白い目を向けてきた。けっこう根に持つタイプのようだ。美澄は笑う。
「安心してください。私は透夜さんしか見てませんからね」
「……そういうのは家に帰ってからにしろ」
 はっきり主張すれば照れてしまうのだから、困った旦那様だ。
 けれど、そっけないのも口が悪いのも今ではご愛敬……。言葉の端々で、彼の態度で、たくさん愛情を感じることができる。
 お腹の中には、そんな愛しい旦那様との子が宿っている。こんなに幸せなことはないと美澄は思った。
 そして、これからもっと幸せなことが待っているのだ。そんなふうに信じていた。

     ***

 ――ところが。
 安定期を迎えた美澄がいよいよ結婚式を控えていた十一月のある日のこと。
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