絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 彼女はわざわざ自動起床ボタンでベッドの背もたれを起こしながら、やわらかな笑顔を見せてくれた。
「美澄ってすごく綺麗な名前ですね。美澄さんって呼んでもいい? 私のことは芽衣でいいから」
「うん。もちろん。じゃあ、芽衣さん」
 気さくな人でよかったと、美澄は胸を撫で下ろす。彼女とは仲良くなれそうだ。
「美澄さんはお産の入院?」
「実は、切迫早産で、まだ三十二週なの」
「そっかぁ。でも、きっと大丈夫よ。そこまで大きく育ってくれたんだもの」
「芽衣さんは?」
「私はね、切迫流産の方。これで二度目よ。だから、ベッドから動いちゃダメなの」
 切迫早産が三十七週未満で未熟なまま産まれてきそうな状態であることに対し、切迫流産は、妊娠二十二週未満で流産しかけている状態だ。
「そうなんだ。二度も……大変だよね」
 なんて言ったらいいかわからず言葉を濁すと、
「あ、気を遣わないで。もうすぐ二十二週になるの。そしたら美澄さんと同じ仲間になれるから待ってて」
 芽衣は明るくそう言い、話を続けた。
「……っていうのもね、ここはお産を控えている人も、切迫流産・早産の人も一緒の大部屋よ。色んな人がいるわ。だから、一応、最初に聞くことにしているの」
 そういうことだったのか、と美澄は納得する。話をしていると、看護師たちが廊下を忙しく往来している様子が見えた。
「満月だから、出産ラッシュだって看護師さんがバタバタしてるみたいね。今夜はもっと大変かも」
「そういう神秘ってやっぱりあるのかな?」
「あるよ、ある。うめき声が夜な夜な聞こえてくるから」
 脅かすように芽衣が言うので、美澄はぞっと背中に悪寒を感じてしまう。
「なんかそれ違う意味じゃあ……」
「覚悟しといて。あれを聞くと、出産するの怖くなっちゃったりするけど……そのうち慣れるよ。人間も動物なんだなって、しみじみ思うわ」
「そ、そうなんだ」
 芽衣のおしゃべりに圧倒されつつ、美澄はふと考えた。
 慣れてしまうくらい芽衣は長くここにいるということなのだろうか。
 あまり詳しいことを聞くのはなんとなく躊躇われた。
「検温ですよー」
 看護師の声が聞こえてきて、美澄は出入り口の方を見る。
 すると、その後方に白衣を着た透夜の姿が見えた。
「あれっ……透夜さん」
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