絶対に愛さないと決めた俺様外科医の子を授かりました
 はにかんだようにそっぽを向いてから、透夜は美澄の頭を撫でてカーテンを開いた。
 背中が照れている。振り返らなかったけれど、透夜のやさしさはちゃんと感じられた。
(久しぶりに見たけれど、やっぱりお医者様の姿はかっこいいな)
 一日に一回見たいくらいには。美澄の本音を告げたら、透夜は「よく言う」と呆れるかもしれないけれど。
 最初の頃は、あの口の悪い外科医……と散々彼を敵視していたのだから。
(なんだか、懐かしいな……)
 うっかり思い出し笑いをしていたら、
「ねえ、ねえ、美澄さん」
 さっそく芽衣から声をかけられ、慌てて振り向いた。すると、他の患者たちもこちらに視線を向けていた。
「びっくりした。東雲先生の奥さんがいらっしゃるなんて」
「東雲先生って、普段どんな感じですか?」
「えっと……」
「すっごく優しそうでいいよね」
 ん? と美澄は違和感を覚える。
 ……そうだった。患者には人気者。美澄への当たりはつよかったけれど、基本、医師としての彼はやさしさで満ちている。
「でも、ちょっとクールな感じがたまらないよね」
「そういう人が優しいと、もうギャップがね!」
「はぁ。羨ましい。どうやったらお医者様とお知り合いになれるんですか」
「ねえ、出逢いはどこで? どっちから告白したの?」
 急に圧力が強まった!
「は、えっ、えっと」
 みんなに質問攻めされて、美澄の顔がどんどん赤くなっていく。この場に透夜がいなくてよかった。
「ほらほら、楽しくお喋りしたい気持ちはじゅうぶんわかりますけれど、もう少しだけ静かにお願いしますよ」
 看護師たちが入ってきて、皆がそれぞれおとなしくなる。芽衣と目があって、お互いに笑った。
 自分ひとりじゃないと思えたからかもしれない。仲間に囲まれ、心配だった気持ちはいつの間にか霧散していたのだった。
 ――その日から美澄の入院生活はしばらく続いた。
 一日置きに張り止めの点滴をしてもらい、基本はできるだけ安静に、シャワーは三日に一度だけ許可されていて、予約できるようになっている。
 体調がよいときは談話室に移動して、お見舞いにきてくれた薫子や柊、それから八重や冴子と話をしたり、透夜と通話をしたりした。そして時々、服部がふらっと現れては同室の女性たちを沸かせていたのだった。
「なんだか美澄さんが来てから、一日が経過するの早く感じる」
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